病院チャプレンによるスピリチュアルケア―宗教専門職の語りから学ぶ臨床実践
内容紹介
スピリチュアルケアに関する質問にあなたはどう答えますか?
「スピリチュアルケアに宗教は必要?」「キリスト教と仏教ではケアに違いがあるの?」「心理学とはどう違うの?」「だれにでもできるの?」
本書はチャプレンへのインタビューを通してこれらの疑問を検証するとともに、さらにスピリチュアルケアという対人援助の臨床構造を明らかにし、実践現場から求められるスピリチュアルケアの考え方や方法を紹介した画期的な本である。
医療におけるスピリチュアルケアに興味がある、実際にスピリチュアルケアにおいて自分に何ができるのか知りたい、スピリチュアルケアの実践者であるチャプレンについて知りたい、スピリチュアルケアの歴史と現在について学んでみたいなど、スピリチュアルケアに関心のある方にはぜひ一読を勧める。
目次
まえがき
第一章 キリスト教スピリチュアリティの源泉―チャプレンの実践を支えるもの―
第一節 少し退屈な、基本となる事柄
第1項 祈る人
第2項 キリスト教の神様は、ひとり、そして三人?
第3項 キリスト教のルーツ
第4項 信仰を支えるもの―聖書と教会
第二節 スピリチュアリティの中心、それは愛
第1項 愛されている私
第2項 隣人愛―愛に押し出されて生きる道
第3項 弱いものへと向かう眼差し
『コラム』マザー・テレサ もっとも貧しい人たちに仕える
第三節 人間性の奥底に潜むもの―罪について
第1項 私たちの底の、黒くて何かどうにもならないもの
第2項 キリスト教の神は裁く神?
第3項 責任を取る愛
第4項 罪から解放されて生きる
『コラム』アメージング・グレイスを知っていますか
第四節 苦しみをどう捉えるか
第1項 苦しみは罰ではない―因果応報ではない考え方
第2項 苦しみを一緒に背負う神―「同伴者キリスト」というスピリチュアリティ
第3項 苦しみの中で豊かに与えられるもの
『コラム』「神様は耐えられないような試練に合わせない」というフレーズのルーツ
第五節 死後の問題―永遠の生命について…32
第1項 死は終わりではない
第2項 死をも超える希望
『コラム』『葉っぱのフレディ』に想うこと
第二章 パストラルケアの基礎とその展開
第一節 パストラルケアとは何か
第1項 パストラルケアの語義
第2項 パストラルケアの内容
第二節 神学における心理学の導入
第1項 パストラル・カウンセリングの特徴と目的
第2項 ドイツ型パストラルケアの特徴―神学における精神分析学の導入
第3項 アメリカ型パストラルケアの特徴―神学への心理学導入に対する批判
第4項 神学に導入された心理学の特徴
第5項 近年のパストラル・カウンセリングにおける、
スピリチュアル・ディレクションの再評価と要請
第6項 パストラルケアとスピリチュアルケア
第三章 病院チャプレンによるスピリチュアルケア実践とは―チャプレンの業務
チャプレンとは何か
第一節 調査対象となった病院とチャプレンのプロフィール
第1項 病院とチャプレンのプロフィール
第2項 病院の宗教色
第3項 チャプレンの志向性
第二節 病院チャプレンの一日
第三節 病院チャプレンによる実践の全体像
第四節 マクロレベルの実践―社会・地域・他機関との関連
第1項 社会全般、地域との関わり
第2項 教会との関わり
第3項 教育機関との関わり
第五節 メゾレベルの実践―組織そのもの、管理職、他職種への働きかけ
第1項 組織への働きかけ
第2項 管理職への働きかけ
第3項 他の専門職への働きかけ
第六節 ミクロレベルの実践―患者や家族への直接の働きかけ
第1項 患者へのスピリチュアルケア
第2項 宗教的ケア
第四章 チャプレンになることの動機
第一節 Aチャプレン 四〇代男性。A病院・牧師室所属。チャプレン歴一〇年
第1項 専門性の越境①―カウンセリングを学ぶことのニーズ
第2項 専門性の越境②―臨床心理学で満たせないもの
第3項 カナダの臨床牧会教育
第4項 臨床神学―臨床牧会教育による自分の変化
第二節 Bチャプレン 五〇代男性。B病院・チャプレン室所属。チャプレン歴一〇年
第1項 生活の痛みから生まれた牧師性
第2項 アイデンティティを支えた牧師職
第三節 Cチャプレン 五〇代女性。C病院・牧師部所属。チャプレン歴一六年
第1項 神の招きによる専門職の実現
第2項 神学教育とソーシャルワーク教育・倫理学教育の学び
第四節 Dチャプレン、五〇代女性、D病院・伝道部所属。チャプレン歴二〇年
第1項 自己洞察を進めた神の導き
第五節 Eチャプレン、六〇代女性、E病院・牧師部所属。チャプレン歴一年半
第1項 親から信仰を受け継ぎ、自覚的に選び取る
第2項 社会福祉関係に進路を取ってみたが
第3項 献身―牧師の道へ
第4項 二つの喪失体験を抱えながらのチャプレン就任
第5項 長期ビジョン実現のステップとしてのチャプレン経験
第六節 Fチャプレン 七〇代男性。F病院・牧師室所属。チャプレン歴二年
第1項 長い牧師経験の後の、思いもよらないチャプレン職との出会い
第七節 Gチャプレン、七〇代男性。G病院・牧師室所属。チャプレン歴八年
第1項 長い牧師生活を引退後、与えられたちょっとわけの違う仕事
第八節 Hチャプレン、四〇代男性。H病院・牧師室所属。チャプレン歴四年
第1項 死を意識した頃の宗教職との出会い―この世の価値体系を超えるもの
第九節 Iチャプレン(臨床パストラルケアワーカー)、三〇代女性。
I病院スピリチュアルケア部。ワーカー歴五年八か月
第1項 さまざまな体験からのスピリチュアルケアへの導き
第五章 スピリチュアルケアのケア理念
第一節 Aチャプレン 四〇代男性。A病院・牧師室所属。チャプレン歴一〇年
第1項 プロフェッショナル・アイデンティティ
第2項 ミニストリー・オブ・プレゼンス―無宗教の患者との関わり
第3項 Wounded Healer(傷ついた癒し人)
第4項 スピリチュアルケアに必要な言語化能力
第5項 患者から問われる死生観・死のイメージ
第6項 日本人へのスピリチュアルケアの考え方
第7項 オープンスタンスの成り立ち
第8項 スピリチュアルケアの目標
第9項 メンタル面の自己調整
第10項 患者との関係における変化
第11項 スピリチュアルケアと宗教の関係
第二節 Bチャプレン 五〇代男性。B病院・チャプレン室所属。チャプレン歴一〇年
第1項 生きる意味への洞察を促すケア
第2項 患者自身が取り組むスピリチュアルケア
第3項 患者の変化に付き添う「チャプレンのダンス」
第4項 スピリチュアルケアを計画・実現する神の働き
第5項 自己形成について
第三節 Cチャプレン 五〇代女性。C病院・牧師部所属。チャプレン歴一六年
第1項 医療は、患者に仕え、神の栄光を現す場所
第2項 無宗教の患者との関わり
2a・患者のサポートを支えるための信仰・宗教
2b・伝道・宗教的回心は、神が行う
第3項 「漂う」というスピリチュアルケア
第4項 悲しみと痛みを通したケア
第四節 Dチャプレン 五〇代女性。D病院・伝道部所属。チャプレン歴二〇年
第1項 無宗教の患者からの祈りの希望―手術前の祈り
第2項 「関係性」をベースにした宗教的行為・祈り
第3項 人間の限界を超えたものに、患者と共に目を向けるための「祈り」
第4項 スピリチュアルケアにおける宗教に対する誤解
第5項 宗教的次元のスピリチュアルペイン―宗教を切り離したスピリチュアルケアの問題点
第6項 「人格的な超越的存在」から、「赦しの答えを求める」というスピリチュアリティ
第7項 スピリチュアルケアの「臨床性」の視点―赦しの実践
第8項 スピリチュアルケアの縦関係の次元―「神―人間」構造でしか見いだせない問題
第9項 受身の踏み込み―病院における牧師の在り方
第10項 「手放す」という態度価値
第五節 Eチャプレン 六〇代女性。E病院・牧師部所属。チャプレン歴一年半
第1項 教会での長い牧会経験を生かしたケア
第2項 宗教的ケアについて
2a・いわゆる純粋な「伝道」について
2b・ニーズの顕在化している場合のケアについて
2c・求めは顕在化しないが、ニーズを感じさせる場合のケアについて
2d・葬儀のケアについて
第3項 患者との関わりと相互の変化
第4項 チャプレン自身のバランスをどうとるか
第5項 関わりにおける患者とチャプレン自身の変化について
第6項 チャプレンの死生観
6a・患者の死の受け止め
6b・患者が死んでいくことについて想うこと
第六節 Fチャプレン 七〇代男性。F病院・牧師室所属。チャプレン歴二年
第1項 チャプレンの役割について
第2項 「牧師として聴く」ということの意味
第3項 メンタル面の自己調整―日曜日の礼拝出席
第4項 チャプレンとしての自己成長―「信仰のロゴス化」
第5項 特定の宗教を持たない患者へのケア
第七節 Gチャプレン 七〇代男性。G病院・牧師室所属。チャプレン歴八年
第1項 中心は神の愛
第2項 寄り添うこと、傾聴することの重要性
第3項 チャプレンの死生観について
第4項 宗教的なケアとスピリチュアルケアについて
4a・チャプレンが入って祈るケースについて
4b・葬儀の相談について
第5項 無宗教の患者への関わりは、求めに応じて
第6項 宗教的ケアとスピリチュアルケアの関係について
第7項 チャプレンとの関わりによる患者の変化
第8項 患者との関わりによるチャプレンの変化
第9項 メンタル面の自己調整
第八節 Hチャプレン 四〇代男性。H病院・牧師室所属。チャプレン歴四年
第1項 有限性の受容
第2項 患者との双方向のケア
第3項 チャプレンとしての自分の意味づけ
第九節 Iチャプレン(臨床パストラルケアワーカー)、三〇代女性。
I病院スピリチュアルケア部、ワーカー歴五年八か月
第1項 その人らしく生きることを支援する
第2項 復活に希望を託して
第3項 五感を使い、鏡に徹すること
第4項 死生観―永遠の命に希望をつないで
第5項 死に対する不安も自分で答えを見つけるのを支援する
第6項 宗教を持たない患者との関わりについて
第7項 ワーカーとの関わりによる患者の変化
第8項 患者との関わりによるIワーカーの変化
第9項 メンタル面の自己調整
第10項 援助者の信仰の有無について
第六章 スピリチュアルケアと宗教の関係について
第一節 先行研究
第二節 チャプレンの実践に関する研究の課題
第三節 病院チャプレンのスピリチュアルケアの理念の特徴
第1項 チャプレンの自らの「宗教性提示」への姿勢―「受け身の踏み込み」(柏木哲夫)
第2項 極限状態における「宗教性提示要求プロセス」の存在
一.チャプレンの「罪意識からの解放」役割
二.スピリチュアルケアから宗教的ケアへの連続性
第3項 宗教的ケア(祈り)のスピリチュアルケア性
一.いわゆる「寄り添い」「傾聴」によるスピリチュアルケアと、
「祈り」による宗教的ケアの一体性
二.スピリチュアルケアと宗教的ケアが「=(イコール)」となるケースの存在
三.神と人間の間の「仲介・活用媒体」としてのチャプレン
四.スピリチュアルケアにおける葬儀の重要性
第4項 チャプレンの臨床実践の基盤としての宗教
第四節 事例研究
事例研究① 極限状態における「宗教性提示要求プロセス」の存在
一.スピリチュアリティ、スピリチュアルペインのアセスメント
二.チャプレンの宗教的自己開示と聖書活用による認知修正―スピリチュアルケア
三.医療環境における宗教専門職の役割―教育的機能
事例研究② スピリチュアルケアから宗教的ケアへの連続性
一.スピリチュアリティ、スピリチュアルペインのアセスメント
二.チャプレンのスピリチュアリティの選択と活用―患者の価値観への配慮
三.宗教的オーソリティの自己活用による認知修正―スピリチュアルケア
四.「神の罰」という言葉のアセスメント
五.医療環境における宗教専門職・チャプレンの役割
事例研究③ 宗教的ケア(祈り)のスピリチュアルケア性
一.スピリチュアリティ、スピリチュアルペインのアセスメント
二.極限状態の寄り添い(傾聴、共感)に必要となる、
祈り・聖書の活用による認知修正―スピリチュアルケア
事例研究④ スピリチュアルケアと宗教的ケアが「=(イコール)」となるケースの存在
一.スピリチュアリティ、スピリチュアルペインのアセスメント
二.宗教的環境・資源の活用を通した意味づけのサポート―スピリチュアルケア
事例研究⑤ 神と人間の間の「仲介・活用媒体」としてのチャプレン
一.スピリチュアリティ、スピリチュアルペインのアセスメント
二.宗教的ツールとしての自己活用によるサポート―スピリチュアルケア
事例研究⑥ スピリチュアルケアにおける葬儀の重要性
一.スピリチュアリティ、スピリチュアルペインのアセスメント
二.宗教的儀式の活用による意味づけ―スピリチュアルケアにおけるケアマネジメント
第五節 結果と考察
第七章 臨床構造におけるスピリチュアルケア論の構築
第一節 スピリチュアルケアを臨床構造において再構築する意義
第二節 チャプレンの宗教性の活用
第1項 患者の意味づけのサポート―生と死の意味づけ・認知修正
第2項 宗教的次元のスピリチュアルケア―患者の健康ニーズから
第3項 スピリチュアルケアの専門職プロセス―サポートの連続の必要性
第三節 宗教性活用によるチャプレンのコーピング(危機対処)
第1項 「活用媒体」である神の代理人―医療職では代行できない専門性
第2項 ソーシャルワークにおける「自己活用」との関係
第3項 ヘルプ・モティベーションとしての死生観活用
第4項 神・聖霊(Holy Spirit)がケアを導くという理解
第四節 エンパワーメントとしての宗教性
第1項 意味づけの痛みへのエンパワーメント
第2項 「信じること」のレッスン―宗教的価値による教育的機能
第五節 患者における意味づけ―祭司・預言者としての役割期待
第六節 神義論を通した患者のコーピング(危機対処)
第七節 神義論コーピングへの臨床
第八章 スピリチュアリティ・スピリチュアルケアの多様な見解
第一節 「スピリチュアリティ」の定義
―宗教学、トランスパーソナル心理学、教育学における理解
第1項 宗教学における「スピリチュアリティ」の理解
a・スピリチュアリティの意味づけ
b・体系・組織的価値との対立構造
c・霊性運動と新霊性運動の関係
d・痛みに共感できない体系的宗教の問題
e・普遍主義的なスピリチュアリティの問題
第2項 トランスパーソナル心理学における「スピリチュアリティ」の理解
a・スピリチュアリティとは、自己存在の意味を獲得すること
b・宗教教育に対する狭義の理解
第3項 教育学における「スピリチュアリティ」の理解
a・WHOのスピリチュアリティ定義の矛盾点
第4項 宗教社会学における「スピリチュアリティ」の理解
a・社会的機能としての宗教、スピリチュアリティ
第5項 考察
第二節 「スピリチュアルケア」の定義―窪寺、谷山、村田における理解
第1項 窪寺俊之におけるスピリチュアルケアと宗教の問題
a・「防衛機能」メカニズムとしてのスピリチュアリティ
b・「防衛機能」メカニズムの破壊を支えるスピリチュアルケアの問題
c・心理カウンセリングと宗教との関係
d・宗教に対する捉え方の問題点
e・宗教の問題に対する心情
第2項 谷山洋三におけるスピリチュアルケアと宗教の問題
a・「スピリチュアリティによるスピリチュアルケア」の定義の問題
b・スピリチュアルケアを行う援助者の問題
c・援助者と患者の「世界」の問題
d・宗教に対する捉え方
第3項 村田久行におけるスピリチュアルケアと宗教の問題
a・「自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛」としてのスピリチュアルペイン
b・「自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛」を支えるスピリチュアルケア
第4項 考察
第九章 現代日本におけるスピリチュアルケアの可能性
第一節 日本に適合するスピリチュアルケアの問題
第1項 欧米と日本という対立軸の設定への現実的疑問
第2項 「日本的な」スピリチュアリティや宗教性への関心について
第3項 既成伝統宗教の臨床的応用―一元論と二元論の思考ツール
第4項 スピリチュアルケア方法論確立の方向性―Educator(教育者)役割
第二節 グリーフケアとしてのスピリチュアルケア
第1項 死生観と援助スキルの養成
第2項 グリーフケアとしての葬儀―「弱さ」を慰め、支える機能
第3項 災害・自殺救助への危機介入としてのスピリチュアルケア
あとがき
第一章 キリスト教スピリチュアリティの源泉―チャプレンの実践を支えるもの―
第一節 少し退屈な、基本となる事柄
第1項 祈る人
第2項 キリスト教の神様は、ひとり、そして三人?
第3項 キリスト教のルーツ
第4項 信仰を支えるもの―聖書と教会
第二節 スピリチュアリティの中心、それは愛
第1項 愛されている私
第2項 隣人愛―愛に押し出されて生きる道
第3項 弱いものへと向かう眼差し
『コラム』マザー・テレサ もっとも貧しい人たちに仕える
第三節 人間性の奥底に潜むもの―罪について
第1項 私たちの底の、黒くて何かどうにもならないもの
第2項 キリスト教の神は裁く神?
第3項 責任を取る愛
第4項 罪から解放されて生きる
『コラム』アメージング・グレイスを知っていますか
第四節 苦しみをどう捉えるか
第1項 苦しみは罰ではない―因果応報ではない考え方
第2項 苦しみを一緒に背負う神―「同伴者キリスト」というスピリチュアリティ
第3項 苦しみの中で豊かに与えられるもの
『コラム』「神様は耐えられないような試練に合わせない」というフレーズのルーツ
第五節 死後の問題―永遠の生命について…32
第1項 死は終わりではない
第2項 死をも超える希望
『コラム』『葉っぱのフレディ』に想うこと
第二章 パストラルケアの基礎とその展開
第一節 パストラルケアとは何か
第1項 パストラルケアの語義
第2項 パストラルケアの内容
第二節 神学における心理学の導入
第1項 パストラル・カウンセリングの特徴と目的
第2項 ドイツ型パストラルケアの特徴―神学における精神分析学の導入
第3項 アメリカ型パストラルケアの特徴―神学への心理学導入に対する批判
第4項 神学に導入された心理学の特徴
第5項 近年のパストラル・カウンセリングにおける、
スピリチュアル・ディレクションの再評価と要請
第6項 パストラルケアとスピリチュアルケア
第三章 病院チャプレンによるスピリチュアルケア実践とは―チャプレンの業務
チャプレンとは何か
第一節 調査対象となった病院とチャプレンのプロフィール
第1項 病院とチャプレンのプロフィール
第2項 病院の宗教色
第3項 チャプレンの志向性
第二節 病院チャプレンの一日
第三節 病院チャプレンによる実践の全体像
第四節 マクロレベルの実践―社会・地域・他機関との関連
第1項 社会全般、地域との関わり
第2項 教会との関わり
第3項 教育機関との関わり
第五節 メゾレベルの実践―組織そのもの、管理職、他職種への働きかけ
第1項 組織への働きかけ
第2項 管理職への働きかけ
第3項 他の専門職への働きかけ
第六節 ミクロレベルの実践―患者や家族への直接の働きかけ
第1項 患者へのスピリチュアルケア
第2項 宗教的ケア
第四章 チャプレンになることの動機
第一節 Aチャプレン 四〇代男性。A病院・牧師室所属。チャプレン歴一〇年
第1項 専門性の越境①―カウンセリングを学ぶことのニーズ
第2項 専門性の越境②―臨床心理学で満たせないもの
第3項 カナダの臨床牧会教育
第4項 臨床神学―臨床牧会教育による自分の変化
第二節 Bチャプレン 五〇代男性。B病院・チャプレン室所属。チャプレン歴一〇年
第1項 生活の痛みから生まれた牧師性
第2項 アイデンティティを支えた牧師職
第三節 Cチャプレン 五〇代女性。C病院・牧師部所属。チャプレン歴一六年
第1項 神の招きによる専門職の実現
第2項 神学教育とソーシャルワーク教育・倫理学教育の学び
第四節 Dチャプレン、五〇代女性、D病院・伝道部所属。チャプレン歴二〇年
第1項 自己洞察を進めた神の導き
第五節 Eチャプレン、六〇代女性、E病院・牧師部所属。チャプレン歴一年半
第1項 親から信仰を受け継ぎ、自覚的に選び取る
第2項 社会福祉関係に進路を取ってみたが
第3項 献身―牧師の道へ
第4項 二つの喪失体験を抱えながらのチャプレン就任
第5項 長期ビジョン実現のステップとしてのチャプレン経験
第六節 Fチャプレン 七〇代男性。F病院・牧師室所属。チャプレン歴二年
第1項 長い牧師経験の後の、思いもよらないチャプレン職との出会い
第七節 Gチャプレン、七〇代男性。G病院・牧師室所属。チャプレン歴八年
第1項 長い牧師生活を引退後、与えられたちょっとわけの違う仕事
第八節 Hチャプレン、四〇代男性。H病院・牧師室所属。チャプレン歴四年
第1項 死を意識した頃の宗教職との出会い―この世の価値体系を超えるもの
第九節 Iチャプレン(臨床パストラルケアワーカー)、三〇代女性。
I病院スピリチュアルケア部。ワーカー歴五年八か月
第1項 さまざまな体験からのスピリチュアルケアへの導き
第五章 スピリチュアルケアのケア理念
第一節 Aチャプレン 四〇代男性。A病院・牧師室所属。チャプレン歴一〇年
第1項 プロフェッショナル・アイデンティティ
第2項 ミニストリー・オブ・プレゼンス―無宗教の患者との関わり
第3項 Wounded Healer(傷ついた癒し人)
第4項 スピリチュアルケアに必要な言語化能力
第5項 患者から問われる死生観・死のイメージ
第6項 日本人へのスピリチュアルケアの考え方
第7項 オープンスタンスの成り立ち
第8項 スピリチュアルケアの目標
第9項 メンタル面の自己調整
第10項 患者との関係における変化
第11項 スピリチュアルケアと宗教の関係
第二節 Bチャプレン 五〇代男性。B病院・チャプレン室所属。チャプレン歴一〇年
第1項 生きる意味への洞察を促すケア
第2項 患者自身が取り組むスピリチュアルケア
第3項 患者の変化に付き添う「チャプレンのダンス」
第4項 スピリチュアルケアを計画・実現する神の働き
第5項 自己形成について
第三節 Cチャプレン 五〇代女性。C病院・牧師部所属。チャプレン歴一六年
第1項 医療は、患者に仕え、神の栄光を現す場所
第2項 無宗教の患者との関わり
2a・患者のサポートを支えるための信仰・宗教
2b・伝道・宗教的回心は、神が行う
第3項 「漂う」というスピリチュアルケア
第4項 悲しみと痛みを通したケア
第四節 Dチャプレン 五〇代女性。D病院・伝道部所属。チャプレン歴二〇年
第1項 無宗教の患者からの祈りの希望―手術前の祈り
第2項 「関係性」をベースにした宗教的行為・祈り
第3項 人間の限界を超えたものに、患者と共に目を向けるための「祈り」
第4項 スピリチュアルケアにおける宗教に対する誤解
第5項 宗教的次元のスピリチュアルペイン―宗教を切り離したスピリチュアルケアの問題点
第6項 「人格的な超越的存在」から、「赦しの答えを求める」というスピリチュアリティ
第7項 スピリチュアルケアの「臨床性」の視点―赦しの実践
第8項 スピリチュアルケアの縦関係の次元―「神―人間」構造でしか見いだせない問題
第9項 受身の踏み込み―病院における牧師の在り方
第10項 「手放す」という態度価値
第五節 Eチャプレン 六〇代女性。E病院・牧師部所属。チャプレン歴一年半
第1項 教会での長い牧会経験を生かしたケア
第2項 宗教的ケアについて
2a・いわゆる純粋な「伝道」について
2b・ニーズの顕在化している場合のケアについて
2c・求めは顕在化しないが、ニーズを感じさせる場合のケアについて
2d・葬儀のケアについて
第3項 患者との関わりと相互の変化
第4項 チャプレン自身のバランスをどうとるか
第5項 関わりにおける患者とチャプレン自身の変化について
第6項 チャプレンの死生観
6a・患者の死の受け止め
6b・患者が死んでいくことについて想うこと
第六節 Fチャプレン 七〇代男性。F病院・牧師室所属。チャプレン歴二年
第1項 チャプレンの役割について
第2項 「牧師として聴く」ということの意味
第3項 メンタル面の自己調整―日曜日の礼拝出席
第4項 チャプレンとしての自己成長―「信仰のロゴス化」
第5項 特定の宗教を持たない患者へのケア
第七節 Gチャプレン 七〇代男性。G病院・牧師室所属。チャプレン歴八年
第1項 中心は神の愛
第2項 寄り添うこと、傾聴することの重要性
第3項 チャプレンの死生観について
第4項 宗教的なケアとスピリチュアルケアについて
4a・チャプレンが入って祈るケースについて
4b・葬儀の相談について
第5項 無宗教の患者への関わりは、求めに応じて
第6項 宗教的ケアとスピリチュアルケアの関係について
第7項 チャプレンとの関わりによる患者の変化
第8項 患者との関わりによるチャプレンの変化
第9項 メンタル面の自己調整
第八節 Hチャプレン 四〇代男性。H病院・牧師室所属。チャプレン歴四年
第1項 有限性の受容
第2項 患者との双方向のケア
第3項 チャプレンとしての自分の意味づけ
第九節 Iチャプレン(臨床パストラルケアワーカー)、三〇代女性。
I病院スピリチュアルケア部、ワーカー歴五年八か月
第1項 その人らしく生きることを支援する
第2項 復活に希望を託して
第3項 五感を使い、鏡に徹すること
第4項 死生観―永遠の命に希望をつないで
第5項 死に対する不安も自分で答えを見つけるのを支援する
第6項 宗教を持たない患者との関わりについて
第7項 ワーカーとの関わりによる患者の変化
第8項 患者との関わりによるIワーカーの変化
第9項 メンタル面の自己調整
第10項 援助者の信仰の有無について
第六章 スピリチュアルケアと宗教の関係について
第一節 先行研究
第二節 チャプレンの実践に関する研究の課題
第三節 病院チャプレンのスピリチュアルケアの理念の特徴
第1項 チャプレンの自らの「宗教性提示」への姿勢―「受け身の踏み込み」(柏木哲夫)
第2項 極限状態における「宗教性提示要求プロセス」の存在
一.チャプレンの「罪意識からの解放」役割
二.スピリチュアルケアから宗教的ケアへの連続性
第3項 宗教的ケア(祈り)のスピリチュアルケア性
一.いわゆる「寄り添い」「傾聴」によるスピリチュアルケアと、
「祈り」による宗教的ケアの一体性
二.スピリチュアルケアと宗教的ケアが「=(イコール)」となるケースの存在
三.神と人間の間の「仲介・活用媒体」としてのチャプレン
四.スピリチュアルケアにおける葬儀の重要性
第4項 チャプレンの臨床実践の基盤としての宗教
第四節 事例研究
事例研究① 極限状態における「宗教性提示要求プロセス」の存在
一.スピリチュアリティ、スピリチュアルペインのアセスメント
二.チャプレンの宗教的自己開示と聖書活用による認知修正―スピリチュアルケア
三.医療環境における宗教専門職の役割―教育的機能
事例研究② スピリチュアルケアから宗教的ケアへの連続性
一.スピリチュアリティ、スピリチュアルペインのアセスメント
二.チャプレンのスピリチュアリティの選択と活用―患者の価値観への配慮
三.宗教的オーソリティの自己活用による認知修正―スピリチュアルケア
四.「神の罰」という言葉のアセスメント
五.医療環境における宗教専門職・チャプレンの役割
事例研究③ 宗教的ケア(祈り)のスピリチュアルケア性
一.スピリチュアリティ、スピリチュアルペインのアセスメント
二.極限状態の寄り添い(傾聴、共感)に必要となる、
祈り・聖書の活用による認知修正―スピリチュアルケア
事例研究④ スピリチュアルケアと宗教的ケアが「=(イコール)」となるケースの存在
一.スピリチュアリティ、スピリチュアルペインのアセスメント
二.宗教的環境・資源の活用を通した意味づけのサポート―スピリチュアルケア
事例研究⑤ 神と人間の間の「仲介・活用媒体」としてのチャプレン
一.スピリチュアリティ、スピリチュアルペインのアセスメント
二.宗教的ツールとしての自己活用によるサポート―スピリチュアルケア
事例研究⑥ スピリチュアルケアにおける葬儀の重要性
一.スピリチュアリティ、スピリチュアルペインのアセスメント
二.宗教的儀式の活用による意味づけ―スピリチュアルケアにおけるケアマネジメント
第五節 結果と考察
第七章 臨床構造におけるスピリチュアルケア論の構築
第一節 スピリチュアルケアを臨床構造において再構築する意義
第二節 チャプレンの宗教性の活用
第1項 患者の意味づけのサポート―生と死の意味づけ・認知修正
第2項 宗教的次元のスピリチュアルケア―患者の健康ニーズから
第3項 スピリチュアルケアの専門職プロセス―サポートの連続の必要性
第三節 宗教性活用によるチャプレンのコーピング(危機対処)
第1項 「活用媒体」である神の代理人―医療職では代行できない専門性
第2項 ソーシャルワークにおける「自己活用」との関係
第3項 ヘルプ・モティベーションとしての死生観活用
第4項 神・聖霊(Holy Spirit)がケアを導くという理解
第四節 エンパワーメントとしての宗教性
第1項 意味づけの痛みへのエンパワーメント
第2項 「信じること」のレッスン―宗教的価値による教育的機能
第五節 患者における意味づけ―祭司・預言者としての役割期待
第六節 神義論を通した患者のコーピング(危機対処)
第七節 神義論コーピングへの臨床
第八章 スピリチュアリティ・スピリチュアルケアの多様な見解
第一節 「スピリチュアリティ」の定義
―宗教学、トランスパーソナル心理学、教育学における理解
第1項 宗教学における「スピリチュアリティ」の理解
a・スピリチュアリティの意味づけ
b・体系・組織的価値との対立構造
c・霊性運動と新霊性運動の関係
d・痛みに共感できない体系的宗教の問題
e・普遍主義的なスピリチュアリティの問題
第2項 トランスパーソナル心理学における「スピリチュアリティ」の理解
a・スピリチュアリティとは、自己存在の意味を獲得すること
b・宗教教育に対する狭義の理解
第3項 教育学における「スピリチュアリティ」の理解
a・WHOのスピリチュアリティ定義の矛盾点
第4項 宗教社会学における「スピリチュアリティ」の理解
a・社会的機能としての宗教、スピリチュアリティ
第5項 考察
第二節 「スピリチュアルケア」の定義―窪寺、谷山、村田における理解
第1項 窪寺俊之におけるスピリチュアルケアと宗教の問題
a・「防衛機能」メカニズムとしてのスピリチュアリティ
b・「防衛機能」メカニズムの破壊を支えるスピリチュアルケアの問題
c・心理カウンセリングと宗教との関係
d・宗教に対する捉え方の問題点
e・宗教の問題に対する心情
第2項 谷山洋三におけるスピリチュアルケアと宗教の問題
a・「スピリチュアリティによるスピリチュアルケア」の定義の問題
b・スピリチュアルケアを行う援助者の問題
c・援助者と患者の「世界」の問題
d・宗教に対する捉え方
第3項 村田久行におけるスピリチュアルケアと宗教の問題
a・「自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛」としてのスピリチュアルペイン
b・「自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛」を支えるスピリチュアルケア
第4項 考察
第九章 現代日本におけるスピリチュアルケアの可能性
第一節 日本に適合するスピリチュアルケアの問題
第1項 欧米と日本という対立軸の設定への現実的疑問
第2項 「日本的な」スピリチュアリティや宗教性への関心について
第3項 既成伝統宗教の臨床的応用―一元論と二元論の思考ツール
第4項 スピリチュアルケア方法論確立の方向性―Educator(教育者)役割
第二節 グリーフケアとしてのスピリチュアルケア
第1項 死生観と援助スキルの養成
第2項 グリーフケアとしての葬儀―「弱さ」を慰め、支える機能
第3項 災害・自殺救助への危機介入としてのスピリチュアルケア
あとがき
【著】 柴田 実、深谷美枝