司法精神科作業療法
内容紹介
触法精神科患者の社会復帰を支える羅針盤となる1冊!
2005年(平成17年),心神喪失者等医療観察法が施行された.これは日本における本格的な司法精神科医療・司法精神科作業療法のスタートを意味する.実際,処遇が終了し,一般の精神科医療・保健福祉サービスに移行する患者も増えてきているが,他害行為を行った患者への医療・ケア,保健福祉サービスを提供する際に参考になる文献は,まだそれほど多くはない.
本書は,わが国よりも約150年前から司法精神科医療を行ってきた英国で出版された“Forensic Occupational Therapy”(Lorna Couldrick, Deborah Alred ed. 2003)を,日本で先駆け的に医療観察制度に関わってきた監訳者らの手により翻訳したものである.司法精神科作業療法とは何かといった基礎から,アセスメントや計画,グループワークの例等,長い歴史と実績に裏打ちされたノウハウから得るものは多い.さらに臨床上問題となりやすい,女性の触法患者への関わり,発達障害領域の司法精神科作業療法,自傷行為の軽減や依存性行動への対応について等にも触れられており,医療観察制度に関わる方,関わろうとしている方以外にも,一般の精神科作業療法を展開する際の実践的なヒントがつまっている.
豊富なケーススタディや,英国の司法精神科医療に関する用語解説も添えられ,国や制度の違いを越えて,司法精神科作業療法,また広くそれ以外の精神科作業療法分野での実践の一助となる1冊である.
目次
第1章 出発点
第2章 では司法精神科作業療法とは何か
第3章 よい臨床実践の基礎
第2部 中度保安施設における作業療法プロセス
第1章 アセスメント
第2章 プログラムの計画
第3章 誰もがアーティスト
第4章 司法精神科作業療法における認知行動療法的グループワーク
第5章 司法精神科作業療法の臨床実践における評価
第3部 さまざまな領域における司法精神科作業療法
第1章 高度保安病院の作業療法―ブロードムーア病院の見解
第2章 刑務所に従事する作業療法士
第3章 地域における司法精神科作業療法の発展
第4部 もち上がってきた特別な問題
第1章 司法精神科作業療法部門の開設
第2章 中度保安施設に従事する作業療法士のセキュリティ問題
第3章 チームワークと多職種の連携
第5部 臨床上の問題
第1章 保安環境の女性患者たち
第2章 発達障害領域における司法精神科作業療法
第3章 自傷行為または制御不能な感情の軽減
第4章 司法領域における依存性行動
第5章 性的犯罪者と作業療法
第6章 人格障害―作業療法の役割
索引
【監訳】 鶴見 隆彦 (厚生労働省社会・援護局)
井坂 真規 (横浜保護観察所)