発達を支える! 子どものリハビリテーション
目次
プロローグ
第1章 ちょっと気になる子どもたち
・発達とは
・発達は進化の過程
・発達の問題が疑われたら
・発達障害のある子どもたちのためにまず何をすべきか
第2章 発達障害の症状と対応法
・発達障害とは
・症状・サイン・対応法
1. 疲れやすい〈神経(精神)〉
2. 自己抑制ができない(脱抑制)
3. 感覚過敏
4. 感覚鈍麻
5. 注意が続かない
6. コミュニケーションが苦手
7. 思考の柔軟性に欠ける,こだわりが強い(遂行(実行)機能障害)
8. 友だちを作るのが難しい(社会性の欠如)
第3章 発達の検査
1. 粗大運動(ABMS-C,ABMS-CT)
2. 新版K式発達検査
3. DENVER Ⅱ(デンバーⅡ発達スクリーニング検査)
4. フロスティッグ視知覚発達検査
5. 乳幼児発達スケール(KIDS)
6. 田中ビネー式知能検査
7. WISC-Ⅳ知能検査
8. DN-CAS
第4章 心と身体のリハビリテーション
・リハビリテーションピラミッド
・身体のリハビリテーション
1. 呼吸・循環を整える
2. 感覚を整える(タクティール(R)ケア)
3. 運動を整える
4. 摂食・嚥下のリハビリテーション
第5章 症例集
症例1. 0歳11カ月 女児(早産,超低出生体重児)
症例2. 1歳8カ月 男児(早産,超低出生体重児)
症例3. 3歳0カ月 女児(発達障害)
症例4. 6歳0カ月 女児(脳腫瘍による高次脳機能障害)
症例5. 6歳6カ月 男児(急性脳症後遺症)
症例6. 10歳9カ月 男児(びまん性軸索損傷)
参考文献
エピローグ
第1章 ちょっと気になる子どもたち
・発達とは
・発達は進化の過程
・発達の問題が疑われたら
・発達障害のある子どもたちのためにまず何をすべきか
第2章 発達障害の症状と対応法
・発達障害とは
・症状・サイン・対応法
1. 疲れやすい〈神経(精神)〉
2. 自己抑制ができない(脱抑制)
3. 感覚過敏
4. 感覚鈍麻
5. 注意が続かない
6. コミュニケーションが苦手
7. 思考の柔軟性に欠ける,こだわりが強い(遂行(実行)機能障害)
8. 友だちを作るのが難しい(社会性の欠如)
第3章 発達の検査
1. 粗大運動(ABMS-C,ABMS-CT)
2. 新版K式発達検査
3. DENVER Ⅱ(デンバーⅡ発達スクリーニング検査)
4. フロスティッグ視知覚発達検査
5. 乳幼児発達スケール(KIDS)
6. 田中ビネー式知能検査
7. WISC-Ⅳ知能検査
8. DN-CAS
第4章 心と身体のリハビリテーション
・リハビリテーションピラミッド
・身体のリハビリテーション
1. 呼吸・循環を整える
2. 感覚を整える(タクティール(R)ケア)
3. 運動を整える
4. 摂食・嚥下のリハビリテーション
第5章 症例集
症例1. 0歳11カ月 女児(早産,超低出生体重児)
症例2. 1歳8カ月 男児(早産,超低出生体重児)
症例3. 3歳0カ月 女児(発達障害)
症例4. 6歳0カ月 女児(脳腫瘍による高次脳機能障害)
症例5. 6歳6カ月 男児(急性脳症後遺症)
症例6. 10歳9カ月 男児(びまん性軸索損傷)
参考文献
エピローグ
プロローグ
2012年の秋,ある新聞の朝刊に「発達障害,育て方のせいじゃない/周囲の理解・支援必要」という記事が掲載されました.記事は,「生まれながらの脳の機能障害が原因とされる子供の発達障害,正確な知識が広まらず,育て方が原因といった偏見も根強い.悩む親たちが前に進むには,周囲も含めた正しい理解と支援の充実が欠かせない」と結んでいます.
最後まで記事をしっかり読めば,周囲の理解や支援が必要という意見には,概ね賛成なのですが,どうも胸がすっきりしません.子供の発達には,もともと持って生まれた遺伝的要因と,生まれた後の環境的要因の2つが関与しています.「発達障害」は,本当に「育て方のせいじゃない」のでしょうか.
育て方のせいじゃない,つまり親や周囲の環境のせいではないとすると,主な原因は,子どもがもともと持っている性質ということになるのでしょうが,本当にそれでいいのでしょうか.
発達には,常に一貫性と多様性が混在し,必ずしも教科書や育児書どおりに普遍的に発達するものではありません.医療や福祉の現場においては,子どもの発達を評価する際に,標準的な範囲から逸脱しているかどうかばかりに意識がいってしまいがちですが,本来,標準化値からの逸脱こそが発達といえます.
子どもの行動が標準から逸脱していた場合,それを頭から障害と捉え,治療の対象として,問題を軽減しようとするアプローチには限界があります.
わが子だからこそ,自分が担当した患者さんだからこそ,親が,周囲が責任を持ってになうべきことがあるのではないでしょうか.発達に問題を抱えた子供たちのリハビリテーションには,彼らの問題点を指摘し,お尻を叩いて行うものばかりではありません.彼らが安心して学び,幸福に働き,健康に生きるために,われわれ自身が,今日明日からできること,それを一緒に考え,実践に移そうではありませんか.
2013年6月
橋本 圭司
最後まで記事をしっかり読めば,周囲の理解や支援が必要という意見には,概ね賛成なのですが,どうも胸がすっきりしません.子供の発達には,もともと持って生まれた遺伝的要因と,生まれた後の環境的要因の2つが関与しています.「発達障害」は,本当に「育て方のせいじゃない」のでしょうか.
育て方のせいじゃない,つまり親や周囲の環境のせいではないとすると,主な原因は,子どもがもともと持っている性質ということになるのでしょうが,本当にそれでいいのでしょうか.
発達には,常に一貫性と多様性が混在し,必ずしも教科書や育児書どおりに普遍的に発達するものではありません.医療や福祉の現場においては,子どもの発達を評価する際に,標準的な範囲から逸脱しているかどうかばかりに意識がいってしまいがちですが,本来,標準化値からの逸脱こそが発達といえます.
子どもの行動が標準から逸脱していた場合,それを頭から障害と捉え,治療の対象として,問題を軽減しようとするアプローチには限界があります.
わが子だからこそ,自分が担当した患者さんだからこそ,親が,周囲が責任を持ってになうべきことがあるのではないでしょうか.発達に問題を抱えた子供たちのリハビリテーションには,彼らの問題点を指摘し,お尻を叩いて行うものばかりではありません.彼らが安心して学び,幸福に働き,健康に生きるために,われわれ自身が,今日明日からできること,それを一緒に考え,実践に移そうではありませんか.
2013年6月
橋本 圭司
【著】 橋本圭司 (国立成育医療研究センター)
【イラスト】 茨木保