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第19回勇気ある経営大賞

そこが知りたい! 感染症一刀両断!

正誤表 電子版あり

定価:3,080円(本体2,800円+税)

商品コード: ISBN978-4-89590-175-8

A5変型 / 216頁 / 2006年
【監修】 古川恵一(聖路加国際病院内科感染症科)
【著】 西原崇創(聖路加国際病院ハートセンター内科)

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内容紹介

今すぐわかる! 今すぐできる! 明解! 感染症マニュアル

こんな感染症治療を一刀両断!
(1)熱、CRP高値、これらのみで抗菌薬投与を行っていないだろうか?
(2)いつも決まった抗菌薬を投与して、多剤耐性菌を増やしていないだろうか?
(3)不適当な検体、標本を使って評価、診断を行っていないだろうか?
どの専門領域であっても誰も感染症治療から離れることはできない。しかし、感染症治療について、何がわからないのかがわからない、何をどう勉強してよいのかわからない、と悩んでいる人も多いだろう。
本書は専門でない人にも理解しやすいように、感染症を疑ったときの考え方と診断のアプローチについて基本的で重要な事項に絞って明解にまとめられている。また各章の最初に、感染症についてわからない点を読者が整理できるような設問を置くなど、難解と思われがちな感染症診療をわかりやすく、効率よく、学べるよういたるところに工夫が施されている。本書を理解すれば、感染症診療・治療に関する十分な知識と臨床力、そして応用力を身につけることができるはずである。
例えば、髄膜炎を疑われる患者さんを前にして何を考え、何を投与したらよいのか、知りたいときにさっと本書を開くもいいし、「腸内細菌科って腸内に常在する細菌のこと?」「クラリスロマイシンに静注薬ってあったっけ?」「どの薬剤がどの系統か?」「培養結果の細菌が本当に感染しているのかわからない!!」という基本的知識を知りたいときにパッと開くのもよい。本書を手にした読者は、今までの感染症の本にはないその使い勝手のよさに驚くだろう。
感染症について理論的で説得力のある治療を行うために、これから感染症を学ぶ学生や研修医をはじめ、内科や各診療科のベテランの先生方にも、また臨床検査技師や薬剤師の方にも、ぜひ手にとってほしい本である。

目次

其の 1 感染症を疑った時の基本的考え方と診断までのアプローチ
感染症について、何がわからないかがわからない方はまずここから
 1.各種感染症の感染臓器特異的な起因菌を想定し、それらに対する適切な抗菌薬を投与する
 2.重症ほど早めに培養検査を行い、できるかぎり早く抗菌薬投与を開始する
 3.重症ほどある程度の広範囲の菌をカバーする抗菌薬が必要
 4.重症例には殺菌性抗菌薬を投与する
 5.起因菌の検出に努める
 6.培養結果を慎重に解釈する
 7.起因菌検出後はそれに合わせた治療を行う
 8.患者の個々の状況に合わせる
 9.患者を毎日注意深く観察する
 10.適切な量と投与期間を決定する
 11.高齢者は特異的な所見が出現しにくい
 12.CRP に診断的意義はない
 13.発熱をきたす疾患は感染症だけではない
    発熱の鑑別疾患
 14.不明熱(FUO:fever of unknown origin)とは?
 15.敗血症(sepsis)の定義と敗血症を疑うサイン

其の 2 グラム染色の意義・方法・解釈
グラム染色って何? という方はここを読んでください!
 1.グラム染色の有用性
 2.検査検体について→よい検体とはどのような検体か?
 3.標本の作成
 4.グラム染色
 5.グラム染色の評価 そのチェックポイント
 6.実際のグラム染色標本とその評価
  Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)
  Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌 Pneumococcus ともいう)
  Streptococcus sp.(連鎖球菌)
  Corynebacterium diphtheriae(ジフテリア)
  Neisseria gonorrhoeae(淋菌)
  Moraxella catarrhalis(モラキセラ カタラーリス)
  Escherichia coli(大腸菌)
  Klebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)
  Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)

其の 3 培養検査 検体の採取から保存、解釈まで
検体の採取法がわからない方、培養結果の細菌が本当に感染しているかがわからない方は必読!
 1.培養検査における一般的注意点
 2.血液培養(実際の採取法:イラスト)
 3.喀痰培養
 4.尿培養
 5.便、腸管洗浄液培養
 6.腹水、胸水、深部膿瘍からの穿刺液
 7.髄液
 8.中心静脈カテーテルなどの先端部培養
 9.胃液
 10.咽頭粘液などのカルチュレット、スワブで採取する検体

其の 4 臨床で遭遇する機会の多い、知っておくべき細菌の基礎知識
細菌の名前を見ても、何がなにやらさっぱりわからない方はここを読んでください!
 1.グラム陽性球菌
 (1)Streptococcus sp.(連鎖球菌)
 (2)Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)
   コラムPRSP、PISP(ペニシリン耐性肺炎球菌)
 (3)Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)
   コラムMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
   コラムVRSA(バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌
 (4)Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium(腸球菌)
   コラムVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)
 2.グラム陽性桿菌
 (1) Corynebacterium diphtheriae(ジフテリア)
 (2) Clostridium sp.(クロストリディウム)
 (3) Listeria monocytogenes(リステリア)
 3.グラム陰性球菌
 (1) Neisseria meningitidis(髄膜炎菌)、Neisseria gonorrhoeae(淋菌)
 (2) Moraxella catarrhalis(モラキセラ カタラーリス)
 4.グラム陰性桿菌
 (1) Escherichia coli(大腸菌):腸内細菌科
 (2) Klebsiella pneumoniae(肺炎桿菌:クレブシェラ)、Klebsiella oxytoca:腸内細菌科
   コラムESBL(Extended-spectrum β-lactamase)
 (3) Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)
   コラムBLNAR(βラクタマーゼ非産生性アンピシリン耐性インフルエンザ菌)
 (4) Enterobacter cloacae、Enterobacter aerogenes(エンテロバクター):腸内細菌科
 (5) Proteus mirabilis、Proteus vulgaris(プロテウス):腸内細菌科
 (6) Salmonella typhi(腸チフス菌)、Salmonella paratyphi(パラチフス菌)、Salmonella enteritidis、Salmonella typhimurium(サルモネラ菌):腸内細菌科
 (7) Shigella dysenteriae(赤痢菌):腸内細菌科
 (8) Serratia marcescens(セラチア:霊菌):腸内細菌科
 (9) Yersinia enterocolitica(エルシニア)、Yersinia pestis(ペスト菌):腸内細菌科
 (10) Citrobacter freundii(シトロバクター):腸内細菌科
 (11) Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)
 (12) Vibrio cholerae(コレラ菌)、Vibrio parahaemolyticus(腸炎ビブリオ)
 (13) Acinetobacter sp.(アシネトバクター)
 (14) Pasteurella multocida(パスツレラ)
 (15) Stenotrophomonas maltophilia(ステノトロフォモナス マルトフィリア)
 5.その他の記憶すべき細菌
 (1) Spirochaetes(スピロヘータ:らせん状桿菌)
 (Treponema pallidum:梅毒、Borrelia burgdorferi:ライム病、Leptospira interrogans:レプトスピラ症)
 (2) Mycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ)
 (3) Legionella pneumophila(レジオネラ)
 (4) Chlamydia pneumoniae(肺炎クラミジア)、Chlamydia psittaci(オウム病クラミジア)、Chlamydia trachomatis
 (5) Helicobacter pylori(ヘリコバクター ピロリ)
 (6) Campylobacter sp.(カンピロバクター)
 (7) Bacteroides fragilis(バクテロイデス)
 (8) Mycobacterium tuberculosis(結核菌)、Mycobacterium leprae(ハンセン病菌)、Mycobacterium kansasii(非定型抗酸菌の一種)、Mycobacterium avium complex(非定型抗酸菌の一種、いわゆる MAC)
 (9) Aspergillus fumigatus(アスペルギルス)
 (10) Candida albicans(カンジダ)

其の 5 各種抗菌薬の分類
どの薬剤がどの系統か? 一般名と商品名が一致しない方はこちらを
 1.ペニシリン系
 2.第一世代セフェム
 3.第二世代セフェム
 4.第三世代セフェム
 5.第四世代セフェム
 6.オキサセフェム系
 7.モノバクタム系
 8.カルバペネム系
 9.アミノグリコシド系
 10.ニューキノロン系
 11.マクロライド系
 12.ケトライド系
 13.リンコマイシン系
 14.テトラサイクリン系
 15.グリコペプチド系
 16.サルファ剤
 17.アゾール系抗真菌剤
 18.その他の抗真菌剤

其の 6 代表的な抗菌薬の特徴
抗菌薬の名前を見ても、何がなにやらさっぱりわからない方はここを読んでください!
 (1) ペニシリン系
   ペニシリン G(PCG):ペニシリン G カリウム
   アンピシリン(ABPC):ビクシリン
   アンピシリン/スルバクタム(ABPC/SBT):ユナシン-S
   ピペラシリン(PIPC):ペントシリン
   ピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ):タゾシン
 (2) 第一世代セフェム
   セファゾリン(CEZ):セファメジンα
 (3)第二世代セフェム
   セフォチアム(CTM):パンスポリン
   セフメタゾール(CMZ):セフメタゾン
   セフロキシム(CXM):オラセフ
 (4)第三世代セフェム
   セフタジジム(CAZ):モダシン
   セフォタキシム(CTX):クラフォラン、セフォタックス
   セフトリアキソン(CTRX):ロセフィン
   セフォペラゾン/スルバクタム(CPZ/SBT):スルペラゾン
 (5) 第四世代セフェム
   セフェピム(CFPM):マキシピーム
   セフピロム(CPR):ケイテン
 (6) モノバクタム系
   アズトレオナム(AZT):アザクタム
 (7) カルバペネム系
   イミペネム/シラスタチン(IPM/CS):チエナム
   メロペネム(MEPM):メロペン
 (8) アミノグリコシド系
   ゲンタマイシン(GM):ゲンタシン
   トブラマイシン(TOB):トブラシン
   アミカシン(AMK):ビクリン、アミカシン
   アルベカシン(ABK):ハベカシン
 (9) ニューキノロン系
   レボフロキサシン(LVFX):クラビット
   シプロフロキサシン(CPFX):シプロキサン
 (10) マクロライド系
   エリスロマイシン(EM):エリスロシン
   クラリスロマイシン(CAM):クラリシッド、クラリス
   アジスロマイシン(AZM):ジスロマック
 (11) リンコマイシン系
   クリンダマイシン(CLDM):ダラシン
 (12) テトラサイクリン系
   ドキシサイクリン(DOXY):ビブラマイシン
   ミノサイクリン(MINO):ミノマイシン
 (13) その他
   テリスロマイシン(TEL):ケテック
   バンコマイシン(VCM):バンコマイシン
   ST 合剤(SMX/TMP):バクタ、バクトラミン
   メトロニダゾール:フラジール
   ダルフォプリスチン/キヌプリスチン:シナシッド
   リネゾリド:ザイボックス
 (14) 抗真菌薬
   アンホテリシン B(AMPH-B):ファンギゾン
   フルコナゾール(FLCZ):ジフルカン
   イトラコナゾール(ITCZ):イトリゾール
   ボリコナゾール(VRCZ):ブイフェンド
   5-FC(フルシトシン):アンコチル
   ミカファンギン(MCFG):ファンガード
 (15) 抗結核薬
   イソニアジド(INH):イスコチン、スミフォン、ヒドラ
   リファンピシン(RFP):リファジン、リマクタン
   エタンブトール(EB):エブトール、エサンブトール
   ストレプトマイシン(SM):硫酸ストレプトマイシン
   ピラジナマイド(PZA):ピラマイド
 (16) 抗ウイルス薬
   アシクロビル(ACV):ゾビラックス、アシクリル、ビクロックス
   バラシクロビル:バルトレックス
   オセルタミビル:タミフル

其の 7 各種感染症に対する Empiric therapy
まず投与する前に効果と副作用を理解しましょう! どれくらい投与すればよいかわからない方はこちら
 1.Pneumonia:肺炎
   (1)Community acquired pneumonia:市中肺炎
   (2)Hospital acquired pneumonia:院内肺炎
 2.Pyelonephlitis:腎盂腎炎 Renal Abscess:腎膿瘍
   (1)Community acquired:市中感染
   (2)Hospital acquired:院内感染
   (3)Renal abscess:腎膿瘍(外科的ドレナージを常に考慮する!)
 3.Prostatitis:前立腺炎
   (1)Community acquired:市中感染
   (2)前立腺の手術後
 4.Meningitis:髄膜炎
   (1)Community acquired:市中感染
   (2)Hospital acquired:院内感染
 5.Brain abscess:脳膿瘍
 6.Infective endocarditis:感染性心内膜炎
   (1)Subacute:亜急性
   (2)Acute:急性
 7.Biliary infection:胆道系感染症
 8.Liver abscess:肝膿瘍
 9.Peritonitis:腹膜炎
   (1)Primary bacterial peritonitis(肝硬変、ネフローゼ症候群に伴う)
   (2)Secondary bacterial peritonitis(消化管穿孔など)
   (3)CAPD peritonitis(腹膜透析に伴う腹膜炎)
 10.Pelvic inflammatory disease:骨盤内感染
 11.Osteomyelitis:骨髄炎
 12.Septic arthritis:敗血症性関節炎
 13.Tonsillitis:扁桃炎
 14.Peritonsillitis:扁桃周囲炎
   Peritonsillar abscess:扁桃周囲膿瘍
   Parapharyngeal space infection:咽頭周囲感染
 15.Epiglottitis:喉頭蓋炎
 16.Sinusitis:副鼻腔炎
 17.Otitis media:中耳炎
 18.Cellulitis:蜂窩織炎
   (1)循環障害のない場合
   (2)循環障害のある場合:Diabetic foot ulcer infection(糖尿病性足壊疽感染)
    Decubitus wound infection(褥創感染)
 19.Necrotizing cellulitis:壊死性蜂窩織炎
   Necrotizing fasciitis:壊死性筋膜炎
   Necrotizing myositis:壊死性筋炎
 20.Intravascular catheter infection:血管内カテーテル感染
   Septic thrombophlebitis:敗血症性血栓性静脈炎
 21.Sepsis:敗血症
   (1)Commnity acquired:市中感染
   (2)Hospital acquired:院内感染
 22.Neutropenic fever:好中球減少者の発熱

其の 8 妊娠・授乳期の抗菌薬療法
比較的安全な薬剤って何?

其の 9 抗菌薬のアレルギーについて
ペニシリン系でだめならセフェム系もだめ?

其の 10 抗菌薬の併用療法
併用した場合の欠点は?

其の 11 感染症におけるステロイド療法
感染症ならステロイドはだめじゃないの?

其の 12 MIC と MBC
聞いたことはあるけどなんだっけ?

其の 13 腎機能障害時の抗菌薬療法の原則
いつも適当に投与量を決定していませんか?
コラム
 1.可能なかぎり早期に抗菌薬を投与すべき感染症とは?
 2.各種細菌の特殊染色
 3.欧米におけるアミノグリコシド系抗菌薬の投与法
 4.リファンピシン(RFP)は MRSA に効く?
 5.真菌感染におけるアンホテリシン B(AMPH-B)とフルコナゾール(FLCZ)およびミカファンギン(MCFG)の感受性の違いについて
 6.グラム染色による抗菌薬の選択法
 7.アミノグリコシド系抗菌薬の 1 日 1 回投与法と PAE(post antibiotic effect)
 8.血管内カテーテル感染の起因菌について

書評

五味晴美(自治医科大学附属病院 感染制御部)
 本書は聖路加国際病院のチーフレジデントを経験した循環器科医師が、一般医の立場から、「感染症診療」のエッセンスを広く還元するために書いた単行本である。内容は非常に実践的で、臨床現場での思考プロセスを、できるだけわかりやすく伝えようとする努力が見られる。「感染症科」を国内でもいち早く確立した聖路加国際病院の古川恵一先生の監修のもと、感染症診療における「正論」を主張・強調している点が評価できる。
 本書の特徴は、評者も日ごろから強調している感染症診療の3大ファクターである、「ホスト=患者」「原因微生物」「抗菌薬」の3つの切り口で書かれている。感染症診療の基本を知らない医学生、研修医が、「自習」できるような工夫がされている。評者が一番感銘を受けた点は、本書の冒頭部にある、さまざまな検体・種類のグラム染色の写真である。この写真からも、著者が日常的にグラム染色を実施し、臨床的に有効に活用している様子が垣間見れる。
 内容であるが、「一般医」が臨床現場で、だれでも「科」によらず、最低限もっていてほしい基本知識を網羅できるように構成されている。また、各疾患ごとに「初期治療=Empirical therapy」をわかりやすく提示している。抗菌薬の選択については、「正解・不正解」という視点でなく、「想定する微生物」を「適切にカバーできているか」どうかの点が重要である。本書に提示された処方は、著者の聖路加国際病院で実行されていると思われるものである。提示以外の処方でも適切なものもあるため、読者もその点も踏まえ、本書を活用していただけるとよりよいと思われる。
 全体として、著者の一般臨床現場における感染症診療を改善したい、との情熱が伝わってくる本である。基礎医学の微生物学と臨床の感染症診療を統合する目的も含め、医学部の低学年から、時間のない研修医、開業医、一般医などに幅広く活用していただきたいと思う。