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第19回勇気ある経営大賞

脳卒中患者だった理学療法士が伝えたい、本当のこと

電子版あり

定価:2,750円(本体2,500円+税)

商品コード: ISBN978-4-89590-606-7

四六 / 300頁 / 2017年
【著】小林純也(旭神経内科リハビリテーション病院)
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内容紹介

患者の身体と心の「本当」を知るための架け橋となる

23歳で脳卒中を発症し、その後、理学療法士となった経験をもとに語る脳卒中者の主観と身体感覚。
私たちが想像する以上にもどかしくつらい運動麻痺や感覚麻痺を脳卒中経験者はどのように感じているのか?
障害を疑似体験できる方法を交えながら、経験しなくてはわからない「患者の本当」についてお伝えします。
医療職をめざす学生から経験豊富なベテランまで一度は読んでほしい、おすすめの1冊。

目次

ご挨拶 ー脳卒中経験者の主観を理解することで、みえる世界

part 1 患者となった僕が伝えたい、本当のこと
 prologueー挫折を経験した、すべての人へ
 chapter 1 入院中の本当
 ・世界が変わった日
 ・沈む身体と、消えた音
 ・天に向かってゲロを吐く
  ちょっとブレイク 脳卒中治療は時間との戦い
 ・暗闇のICU
 ・主治医は内科医
 ・動かぬ身体と、少ない身体所有感
 ・喪失体験と自殺願望
 ・リハ開始と病識欠如
 ・病院の窓からみえた景色
 ・動き始めた手、震え始めた手
 ・痺れ出現! 二度目の脳梗塞
 ・募る不安と支えとなった言葉
 ・利き手交換のコツ
 ・物足りぬリハと、やり過ぎた自主練習
 ・初めての坊主と決意
 ・装具と杖、拒否する空意地
  ちょっとブレイク 支えてくれた人たち(番外編)
 ・ようやくわかった原因
 ・眠れぬ夜
 ・葛藤と身体
 ・親友と他人
 ・検査結果
 ・退院日と、知らされぬ今後
 ・退院前の、階段デート
 ・迎えた退院日
  ちょっとブレイク 回復期リハビリテーション病院に転院しなかった理由

 chapter 2 退院後の本当
 ・いざ退院、ギャップとの遭遇
 ・自主練習の限界
 ・復職とボクシングと「回復限度」
 ・「回復限度なんてないよ」
 ・週6日の猛特訓
 ・回復の実感とボクシング
 ・ついにボクシング再開! 理想の自分と動けぬ自分
 ・諦めきれぬ夢
 ・直談判と結果発表
 ・つらい挫折と新たな目標 「理学療法士」ー障がいから強みへ
  ちょっとブレイク 体調と症状の関係
 ・能動的な脳卒中経験者との出会い
 ・すべての脳卒中経験者の皆さんへ

part 2 理学療法士となった私が伝えたい、本当のこと
 prologue ―さまざまな障がいを体験して
 chapter 1 運動麻痺の本当
 ・運動麻痺とは
 ・「片麻痺」って本当 ?
 ・Brunnstrom recovery stageⅥは「正常」 ?
 ・利き手交換の方法
 ・痙性麻痺と筋力増強練習
 ・脳卒中経験者の歩行を体感しよう
 ・ちびまる子ちゃんとロッカーファンクション
 ・自動歩行と随意歩行
 ・階段昇降の主観
 ・患者さんの主観を治療に活かす
 ・大事な「そもそも」
 ・勧める前にやってみよう
  ちょっとブレイク 運動麻痺者の疲労のサイン
 ・まとめ

 chapter 2 感覚障害の本当
 ・感覚とは
 ・視床 = 感覚 ?
 ・感覚脱失……本当 ?
 ・大事な身体所有感とリハ効果の持続性
 ・声がけと波紋
 ・「自分の身体」と筋紡錘
 ・感覚障害を体験する
  ちょっとブレイク 筋緊張を感覚入力で軽減する
 ・まとめ

 chapter 3 運動失調の本当
 ・運動失調とは
 ・自分勝手に震える手―企図振戦
 ・震え増強のスイッチ
 ・頑張った結果の「代償固定」
 ・運動学習と落とし穴
 ・不安定さの輪郭をみつける
 ・運動失調と運動学習を体感する
  ちょっとブレイク 固定をケアするストレッチング
 ・不安定さを支える医療デバイス
 ・まとめ

 chapter 4 高次脳機能障害の本当
 ・高次脳機能障害とは
 ・「失行」とは
 ・「失語」とは
 ・失行と失語は似ている ?
 ・失語症を体感しよう
 ・嫌なことを忘れない理由
  ちょっとブレイク 頭に鉄棒が刺さった男
 ・まとめ

 chapter 5 患者の心の中の本当
 ・いつもやさしいあの人と氷山
 ・障害受容とは
 ・患者の気持ちとオススメの書籍
 ・どん底と支えてくれたもの
 ・病院と生活、ギャップに耐えるために
  ちょっとブレイク 家屋調査のちょっとしたポイント
 ・ギャップを乗り越えるための◯◯
  ちょっとブレイク 大事な「はじめまして」
 ・奪われた「能動性」
 ・能動性を引き出すたったひとつのこと
 ・押し売りに注意
  ちょっとブレイク 障がい者とは ?
 ・私が思う医療 ・ 介護職に必要なこと
 ・一線を越えない
  ちょっとブレイク 依存の対義語は ?
 ・能動性は正義ではない
 ・私が思うリハとは
 epilogue 最後のお願い
 ・あとがき

 ・文献

書評

脳卒中患者 兼 認定理学療法士にしか伝えられないリアルを感じてほしい
評者: 町田志樹 (臨床福祉専門学校)

 現在,脳卒中の患者数は全国で約150万人にのぼり,毎年25万人以上が新たに発症しているといわれている.私も理学療法士としてこれまで多くの脳卒中患者と関わりをもってきたが,その関わりが正しかったのか,最良であったのかについては今も自問自答し続けている.  
 この度,三輪書店から「脳卒中患者だった理学療法士が伝えたい,本当のこと」が出版された.本書は脳卒中患者の障がいや心理を理解する上で,最良の一冊だと確信している.まず,著者である小林純也先生について触れておきたいと思う.
 小林先生はタイトルにもあるように,脳卒中経験を有する理学療法士である.その彼が病いを発症したのはわずか23歳.プロボクサーを夢見る青年が突如として脳卒中を発症し,身体の自由と将来の夢を奪われ,失意の底に突き落とされたところから本書は始まる.ベッド上での苦悩と葛藤,リハビリテーションに対する思い,回復限度という言葉に対する憤り.本書の前半からは,脳卒中当事者でしか伝えることができない,リアルな心情を感じ取ることができる.  
 また,後半では自身の経験に認定理学療法士(脳卒中)の見識と国内外のエビデンスを加え,脳卒中患者の障がいを分かりやすく解説している.運動麻痺や高次脳機能障害,運動失調などは医療従事者であれば,誰もが卒前・卒後教育で学んできたはずである.しかし,当然ながらそれらを実際に経験することはできない.私自身,学生に障がいとは何かを教える立場ではあるが,彼が伝えるリアルな症状の解説には目から鱗が落ちる思いである.また,学生の皆さんには是非,最後の章の「患者の心の中の本当」を実習前に読んでいただきたい.実習に臨むために重要なものを身に付けることができるはずである.  
 末筆にはなるが,彼の母校の教員として本書が世に出ることを心底嬉しく思う.23歳の発症から本書の執筆を終えるまでには,筆舌に尽くしがたい本人の努力と周囲の支えがあったと推測する.我々はこのような書籍が読めることを当然と思ってはならない.執筆を夢見たが,叶わなかった事例もあるかもしれない.是非,本書が脳卒中患者と向き合う全ての医療従事者の一助になることを,心から願う.

「理学療法」Vol.34 No.10(2017年10月号) (メディカルプレス)より転載