再生医療とリハビリテーション
電子版あり
定価:6,600円(本体6,000円+税)
商品コード: ISBN978-4-89590-628-9
内容紹介
再生医療 + リハビリテーション = 完治の未来へ !
再生医療の発展により、これまで困難と考えられてきた疾患の治療が可能となってきた。当初、再生医療は、後遺症や障害を残さない根治療法を目指した新規治療法と考えられていたが、臨床試験が進むにつれ、細胞治療後のリハビリテーションの重要性が示されるようになってきた。再生医療によって機能障害は改善されるため、既存のリハビリテーションにおける障害の定義付け・ゴール設定が再考され、臨床現場が大きく変わることが予想されている。完治を目指した展開を見据え、再生医療、リハ医学、ロボット工学、脳科学を融合させた知識の普及を図る第一歩となる1冊。
目次
第1章 再生医療の基礎知識
A 幹細胞とは・・・弓削 類
1 幹細胞
2 幹細胞の種類
3 神経幹細胞
B ES細胞・・・福角勇人, 金村米博
1 ES細胞とは
2 ES細胞の分類:ナイーブ型とプライム型
3 ES細胞の培養法
4 ES細胞の特徴:未分化性
5 ES細胞の特徴:分化多能性
6 さまざまなヒトES細胞の樹立法
7 ES細胞と再生医療
C iPS細胞・・・中川誠人
1 iPS細胞とは:基礎と応用に活躍
2 iPS細胞の樹立:体細胞初期化〔リプログラミング〕
3 iPS細胞の培養:基礎研究から応用まで見据えて
4 iPS細胞の医療応用
5 iPS細胞の未来:最大のメリットを生かして
6 おわりに
D MSC・・・光原崇文, 栗 薫
1 MSCとは
2 MSCの由来による特性と相違
3 MSCの臨床応用へ向けて
E 再生医療における細胞製造と培養技術の重要性・・・紀ノ岡正博
1 再生医療における細胞製造の重要性
2 細胞製造の考え方
3 培養の特徴と継代培養
4 おわりに
第2章 再生医療の臨床応用
[A.神経系]
1 脳梗塞の再生医療・・・本望 修
1 脳梗塞の社会に与える影響
2 先駆け審査指定制度の対象品目として指定
3 医師主導治験
4 先行した臨床研究
5 脊髄損傷への適応拡大
2 脊髄損傷の再生医療・・・髙橋信也, 光原崇文, 末田泰二郎
1 病態
2 再生医療の効果・臨床応用
3 今後の展望
3 パーキンソン病の再生医療・・・土井大輔, 髙橋 淳
1 病態
2 再生医療の効果・臨床応用
3 今後の展望
B 網膜:iPS細胞を使った再生医療・・・松山オジョス武, 万代道子, 髙橋政代
1 網膜の構造
2 視細胞と網膜色素上皮
3 網膜疾患
4 iPS細胞および立体網膜組織の自己組織化
5 網膜細胞移植
6 臨床:網膜色素上皮移植
7 自家移植vs他家移植
C 軟骨〔関節〕の再生医療・・・阪上守人, 中村憲正
1 はじめに
2 従来の軟骨損傷治療
3 軟骨損傷の細胞治療
4 おわりに
D 重症心不全に対する心筋再生治療法の開発・・・澤 芳樹
1 はじめに
2 心不全に対する細胞治療の開拓:injection法による混合細胞移植
3 心不全に対する細胞治療の発展:細胞シート技術の開発
4 筋芽細胞シートの心不全に対する機能改善のメカニズム
5 細胞シート治療法の臨床研究および医師主導型治験への発展
E 半月板,靱帯の再生医療・・・中田 研, 下村和範, 武 靖浩
1 病態
2 再生医療の効果・臨床応用
3 今後の展望
第3章 再生医療とリハビリテーション
over view 再生医療に求められるリハビリテーション・・・川平和美
1 はじめに
[A.ロボット]
1 サイバニクス治療:医療用HALによる機能再生治療・・・山海嘉之, 櫻井 尊
1 はじめに
2 サイバニクス治療
3 HALの適用事例
4 再生医療と医療用HALとの新しい融合複合治療に向けて
5 おわりに
2 RE-Gait・・・田中英一郎, 弓削 類, 中川 慧
1 はじめに
2 RE-Gaitとは
3 RE-Gaitの適用事例
4 おわりに
[B.運動療法]
1 神経系のリハビリテーション・・・下堂薗 恵, 川平和美
1 はじめに
2 治療ガイドラインから再生医療に求められるリハビリテーションへの飛躍 :
「課題指向」から「賢い機能指向」+「賢い課題指向」の併用リハ治療へ
3 片麻痺上肢
4 片麻痺下肢, 運動障害, ADL障害
5 歩行障害
2 運動器系のリハビリテーション・・・中田 研, 木村佳記, 前 達雄
1 リハビリテーションの現状
2 臨床応用:再生医療で求められるリハビリテーションとは
3 今後の展望
3 心臓リハビリテーションと再生医療・・・勝俣良紀, 遠山周吾, 福田恵一
1 心臓リハビリテーションの現状
2 再生医療と心臓リハビリテーション
C 評価法・・・中川 慧, 猪村剛史
1 はじめに
2 中枢神経系疾患に対する評価
3 運動器疾患に対する評価
4 心疾患に対する評価
5 まとめ
略語集
用語解説
索引
A 幹細胞とは・・・弓削 類
1 幹細胞
2 幹細胞の種類
3 神経幹細胞
B ES細胞・・・福角勇人, 金村米博
1 ES細胞とは
2 ES細胞の分類:ナイーブ型とプライム型
3 ES細胞の培養法
4 ES細胞の特徴:未分化性
5 ES細胞の特徴:分化多能性
6 さまざまなヒトES細胞の樹立法
7 ES細胞と再生医療
C iPS細胞・・・中川誠人
1 iPS細胞とは:基礎と応用に活躍
2 iPS細胞の樹立:体細胞初期化〔リプログラミング〕
3 iPS細胞の培養:基礎研究から応用まで見据えて
4 iPS細胞の医療応用
5 iPS細胞の未来:最大のメリットを生かして
6 おわりに
D MSC・・・光原崇文, 栗 薫
1 MSCとは
2 MSCの由来による特性と相違
3 MSCの臨床応用へ向けて
E 再生医療における細胞製造と培養技術の重要性・・・紀ノ岡正博
1 再生医療における細胞製造の重要性
2 細胞製造の考え方
3 培養の特徴と継代培養
4 おわりに
第2章 再生医療の臨床応用
[A.神経系]
1 脳梗塞の再生医療・・・本望 修
1 脳梗塞の社会に与える影響
2 先駆け審査指定制度の対象品目として指定
3 医師主導治験
4 先行した臨床研究
5 脊髄損傷への適応拡大
2 脊髄損傷の再生医療・・・髙橋信也, 光原崇文, 末田泰二郎
1 病態
2 再生医療の効果・臨床応用
3 今後の展望
3 パーキンソン病の再生医療・・・土井大輔, 髙橋 淳
1 病態
2 再生医療の効果・臨床応用
3 今後の展望
B 網膜:iPS細胞を使った再生医療・・・松山オジョス武, 万代道子, 髙橋政代
1 網膜の構造
2 視細胞と網膜色素上皮
3 網膜疾患
4 iPS細胞および立体網膜組織の自己組織化
5 網膜細胞移植
6 臨床:網膜色素上皮移植
7 自家移植vs他家移植
C 軟骨〔関節〕の再生医療・・・阪上守人, 中村憲正
1 はじめに
2 従来の軟骨損傷治療
3 軟骨損傷の細胞治療
4 おわりに
D 重症心不全に対する心筋再生治療法の開発・・・澤 芳樹
1 はじめに
2 心不全に対する細胞治療の開拓:injection法による混合細胞移植
3 心不全に対する細胞治療の発展:細胞シート技術の開発
4 筋芽細胞シートの心不全に対する機能改善のメカニズム
5 細胞シート治療法の臨床研究および医師主導型治験への発展
E 半月板,靱帯の再生医療・・・中田 研, 下村和範, 武 靖浩
1 病態
2 再生医療の効果・臨床応用
3 今後の展望
第3章 再生医療とリハビリテーション
over view 再生医療に求められるリハビリテーション・・・川平和美
1 はじめに
[A.ロボット]
1 サイバニクス治療:医療用HALによる機能再生治療・・・山海嘉之, 櫻井 尊
1 はじめに
2 サイバニクス治療
3 HALの適用事例
4 再生医療と医療用HALとの新しい融合複合治療に向けて
5 おわりに
2 RE-Gait・・・田中英一郎, 弓削 類, 中川 慧
1 はじめに
2 RE-Gaitとは
3 RE-Gaitの適用事例
4 おわりに
[B.運動療法]
1 神経系のリハビリテーション・・・下堂薗 恵, 川平和美
1 はじめに
2 治療ガイドラインから再生医療に求められるリハビリテーションへの飛躍 :
「課題指向」から「賢い機能指向」+「賢い課題指向」の併用リハ治療へ
3 片麻痺上肢
4 片麻痺下肢, 運動障害, ADL障害
5 歩行障害
2 運動器系のリハビリテーション・・・中田 研, 木村佳記, 前 達雄
1 リハビリテーションの現状
2 臨床応用:再生医療で求められるリハビリテーションとは
3 今後の展望
3 心臓リハビリテーションと再生医療・・・勝俣良紀, 遠山周吾, 福田恵一
1 心臓リハビリテーションの現状
2 再生医療と心臓リハビリテーション
C 評価法・・・中川 慧, 猪村剛史
1 はじめに
2 中枢神経系疾患に対する評価
3 運動器疾患に対する評価
4 心疾患に対する評価
5 まとめ
略語集
用語解説
索引
書評
身近に迫った臓器再生における、現在の立ち位置と最先端の情報を肌で感じられる一冊
評者: 名越慈人(慶應義塾大学医学部整形外科)
基礎研究から臨床応用へ――。近年の細胞生物学の急速な発展により、長い人類の歴史の中で不可能と考えられていた再生医療がついに現実のものになりつつある。しかし、一口で“再生”といっても、その手法や評価方法はターゲットとする成体組織によってさまざまである。本書は、わが国における各分野のトップランナーが、これまでの研究成果をわかりやすく解説し、臨床化へ向けた取り組み、さらにはリハビリテーションの有用性について詳細に記載している。神経や軟骨、網膜や心臓といった、本来ならば再生が困難と考えられる重要組織について、再生医療の確立へ向けた現状と課題をコンパクトにまとめており、医療従事者や研究者のみならず、この領域に興味のある一般の方々にも是非ご一読いただきたい書物である。
再生医療における主役は、何といっても幹細胞である。幹細胞は種々の細胞を生み出す多能性をもち、さらに自身が増殖する自己複製能も有している。幹細胞は、成体組織に存在する体性幹細胞、受精卵から作製する胚性幹細胞(ES細胞)、そして初期化因子を導入して体細胞を若返らせる人工多能性幹細胞(iPS細胞)の3つに分けられる。第1章では、これらの細胞の樹立や特性について基本的な内容とともに解説されている。特筆すべきは細胞工学に関する内容で、いかに安全で機能的な細胞を大量に作製し患者さんのもとへ届けるか、そのプロセスについて詳しく述べられている。もはや再生医療は、単一施設で推進できるほどの簡単なものではなく、産学連携による社会実装を目指した一大プロジェクトといえよう。
第2章では、幹細胞を用いた再生医療の実際をわかりやすくまとめている。特に、すでに臨床応用を開始している網膜や心筋に対する細胞移植の項は必読である。どちらにおいても、移植後長期の安全性が確認されているが、今後は統一された安全性基準の確立と治療成績に対する評価方法の選定が重要な課題と考える。また、どのテーマにおいても自家移植 vs. 他家移植の問題が挙げられている。自家移植では免疫応答を回避できるが、個々の患者さんから細胞を採取し培養を行うと、安全性試験も含めて莫大な費用と時間が必要である。バンク化された他家の細胞を移植するほうが効率はよいが、免疫抑制剤の必要性が生じるため、移植後の細胞の生着や患者さんの全身状態には慎重な観察を要する。
第3章では、再生医療で求められるリハビリテーションについて概説されている。単純に細胞移植を行うだけでは、組織の再生は不完全である。より機能的な治療を推進するためには、適切なリハビリテーションを行って適度な負荷をかけることにより、移植細胞と宿主の環境との親和性を高めることが重要である。HALやRE-Gaitといった最新のロボット技術は、すでに臨床現場で実用化されており、今後明らかになる長期成績に期待したい。
身近に迫った臓器再生における、現在の立ち位置と最先端の情報を肌で感じられる一冊である。再生医療に少しでも興味のある方には、是非お勧めしたい。
「脊椎脊髄ジャーナル」Vol.31 No.7(2018年7月号) (三輪書店)より転載
評者: 名越慈人(慶應義塾大学医学部整形外科)
基礎研究から臨床応用へ――。近年の細胞生物学の急速な発展により、長い人類の歴史の中で不可能と考えられていた再生医療がついに現実のものになりつつある。しかし、一口で“再生”といっても、その手法や評価方法はターゲットとする成体組織によってさまざまである。本書は、わが国における各分野のトップランナーが、これまでの研究成果をわかりやすく解説し、臨床化へ向けた取り組み、さらにはリハビリテーションの有用性について詳細に記載している。神経や軟骨、網膜や心臓といった、本来ならば再生が困難と考えられる重要組織について、再生医療の確立へ向けた現状と課題をコンパクトにまとめており、医療従事者や研究者のみならず、この領域に興味のある一般の方々にも是非ご一読いただきたい書物である。
再生医療における主役は、何といっても幹細胞である。幹細胞は種々の細胞を生み出す多能性をもち、さらに自身が増殖する自己複製能も有している。幹細胞は、成体組織に存在する体性幹細胞、受精卵から作製する胚性幹細胞(ES細胞)、そして初期化因子を導入して体細胞を若返らせる人工多能性幹細胞(iPS細胞)の3つに分けられる。第1章では、これらの細胞の樹立や特性について基本的な内容とともに解説されている。特筆すべきは細胞工学に関する内容で、いかに安全で機能的な細胞を大量に作製し患者さんのもとへ届けるか、そのプロセスについて詳しく述べられている。もはや再生医療は、単一施設で推進できるほどの簡単なものではなく、産学連携による社会実装を目指した一大プロジェクトといえよう。
第2章では、幹細胞を用いた再生医療の実際をわかりやすくまとめている。特に、すでに臨床応用を開始している網膜や心筋に対する細胞移植の項は必読である。どちらにおいても、移植後長期の安全性が確認されているが、今後は統一された安全性基準の確立と治療成績に対する評価方法の選定が重要な課題と考える。また、どのテーマにおいても自家移植 vs. 他家移植の問題が挙げられている。自家移植では免疫応答を回避できるが、個々の患者さんから細胞を採取し培養を行うと、安全性試験も含めて莫大な費用と時間が必要である。バンク化された他家の細胞を移植するほうが効率はよいが、免疫抑制剤の必要性が生じるため、移植後の細胞の生着や患者さんの全身状態には慎重な観察を要する。
第3章では、再生医療で求められるリハビリテーションについて概説されている。単純に細胞移植を行うだけでは、組織の再生は不完全である。より機能的な治療を推進するためには、適切なリハビリテーションを行って適度な負荷をかけることにより、移植細胞と宿主の環境との親和性を高めることが重要である。HALやRE-Gaitといった最新のロボット技術は、すでに臨床現場で実用化されており、今後明らかになる長期成績に期待したい。
身近に迫った臓器再生における、現在の立ち位置と最先端の情報を肌で感じられる一冊である。再生医療に少しでも興味のある方には、是非お勧めしたい。
「脊椎脊髄ジャーナル」Vol.31 No.7(2018年7月号) (三輪書店)より転載
【編集】再生医療とリハビリテーション研究会