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第19回勇気ある経営大賞

ぼくは、ADHD! 自分を操縦する方法

定価:2,420円(本体2,200円+税)

商品コード: ISBN978-4-89590-194-9

A5 / 240頁 / 2003年
【著】 ベン・ポリス
【訳】 山本俊至(神奈川県立こども医療センター)

内容紹介

教育関係者、福祉関係者、医師をはじめとする医療関係者、臨床心理士、そして何よりわが子のADHDに悩む家族に必読の書

ADHD(注意欠陥性移動性障害)は不注意や衝動的行動を特徴とし、学校や家庭で周りの人たちを巻き込み、時に深刻な問題を招く。
本書は、周囲にはまったく理解できないADHDの行動特性の「なぜ」に、学習能力や衝動的な行動に悩み、9歳で自殺すら考えた本人自らが答えていく。ベンは、さまざまな経験や出会いを重ね、自分の中で湧き起こるADHD的症状を的確につかみ、独自の学習方法や生きるコツを会得した。
障害をもちつつ現在なお奮闘する障害者自身が著した本として異色であり、教育や医療のあり方を含め、貴重なアドバイスに満ちている。
教育関係者、福祉関係者、医師をはじめとする医療関係者、臨床心理士、そして何よりわが子のADHDに悩む家族に必読の書。


目次

第I章 〇~六歳
  〇~二歳
  一九八三年のアッシュ・ウエンズデイ
  ADHD本格化のきざし

第II章 七~十二歳
  人生最高のはずだった年代
  私立学校入学
  二年生
  三年生
  四年生
  小さいこどもは大人の道具で遊ぶもんじゃない
  何がなんでも勝ちたがる子
  五年生、ほかの学校へ転校
  六年生

第III章 十三~十八歳
  ぼくの診断名はADHD!
  ハイスクール 七年生
  人と違うのがいやだ!
  両親への手紙と一学期の成績表
  むちゃくちゃだったキャンプ
  カトリック学校
  ハイスクール八年生
  バッド・ボーイ・ベン、カム・バック!
  十年生
  共学! 荷造り、そして、船出のとき!
  十二年生--誰がこんなところまで来れると思っただろう
  一学期、十七歳にして、変な奴だったのが「宿題おたく」になってしまった!
  二学期、最後のハードル!
  ベン・ポリス大学に行く!イエーッ
  大学はADHDの人こそ行くべきところだ!

第IV章 ADHDについて考えたこと
  成功の秘訣!
  怒りと暴力に満ちたADHDのこどもをどう扱うべきか
  ADHDはどこから来たのか
  なぜADHDはオーストラリアや北米でそんなに多いのか?

第V章 薬とどうつき合うか
  薬を飲むか、飲まないか?それが問題だ!
  刺激薬の副作用
  どんなとき薬を飲んで、どんなとき薬を飲まない方がいいのか
  薬の過剰投与の問題
  いつ薬が必要か?
  どのように内服治療を受けるべきか?

第VI章 ADHDのこどもの勉強のしかた
  どうやってこどもにより良い学校を選ぶか
  学校があなたのこどもに手が負えなくなったらどうすべきか
  人間関係
  ADHDのこどもにどうやって教えればいいか
  宿題!

第VII章 ADHDについてのあれこれ
  ADHDと仕事
  性
  思い込みとのぼせ
  歴史から学ぶ

書評

野中 猛(日本福祉大学、医師)
 出だしから、質の良い童話のような滑り出しだ.注意欠陥多動性障害(ADHD)をもった本人が書いた作品であると認めるには、かなり読み進まなければならない.でも、あっという間に引き込まれて、最後にはすっかり納得する.これがADHDの体験なんだ.
 「動くものがあると母乳を中断する」から始まって、「授業中も空想」したり、「お決まりの行動は守れないけど、自分の興味に集中すると能力発揮」「なんであんなことやったのか後で戸惑う」衝動性といったもののために、学校を12年間で6回も変えなくてはならない少年であった。
 それが、個人制のスポーツで自信を取り戻し、「視覚や聴覚を使うと集中しやすい」「午後よりも午前が集中できる」「集中しやすい図書館を利用する」ことで知識を増やした結果、大学入学資格を獲得する。体験者であることを最大限に用いて、ADHDをもつ子どものための家庭教師や家族相談を行うというアイデアでビジネスコースに合格した。それも、実際には「火山の爆発」のときには格闘に付き合い、家族に「火山の解放」のコツを伝授するのだから、専門家にはできない活動である。
 トム・ハートマンによる“猟師”の性格特性も紹介しているが、体験を重ね合わせているから実に納得である。ADHDと呼ばれる人々は、「機敏で、今に集中し、ひらめきで方針を変え、視覚的に考え、対人関係では互いに高い期待をもつ」という狩猟社会で生きている。逆に、「気を散らさず、着実に、将来を見据えて、飽きずに、我慢強い」農夫の活動は苦手なのである。
 リタリンという薬物を有効に利用している一方で、一日中使うと“ゾンビ”のようになるつらさや、不眠や食欲不振などの副作用との実際的な付き合い方に触れている。「薬は一番の治療法だけど、ADHDを解決するのはうまくコントロールする方法を学ぶことだ」と具体的に説明している。医者の指導ではこうはいかない。
 他にも実に多くのヒントが散りばめられており、認知行動障害をもつとされる方々を支援しようとする人々には必読書である。しかも、大切なのは援助し続けることではなく、本人ができることを増やして、本来の能力を発揮していくエンパワメントやリカバリーなのだ、という実体験例でもある。あらゆる障害にかかわるすべての人々に感動を呼び起こすに違いない。
 訳者は小児神経学専攻の若いお医者さんである。訳文はこなれていて、一編の童話のようだ。医学的な興味ばかりか、文学の立場からも、原文を確かめてみたくなった。
『作業療法ジャーナル』37巻8号、p790(2003)