町田志樹の聴いて覚える解剖学 中枢・末梢神経 編
定価:2,200円(本体2,000円+税)
商品コード: ISBN978-4-89590-700-2
内容紹介
シリーズ2作目は神経! 難しい構造も、複雑な機能も、これなら覚えられる!
動画・音声つきで効率よく解剖学の知識を身につけられる「町田志樹の聴いて覚える解剖学」、待望のシリーズ2冊目。前作『町田志樹の聴いて覚える起始停止』に続き、今回は複雑で覚えにくい中枢神経・末梢神経の構造や機能を、分かりやすく解説します。
著者は、医療系養成校の講師を務めつつ、現職者のための解剖学セミナーも数多く開催。長年、生徒達の「覚えられない」悩みに耳を傾けてきました。なかでも神経に関してはある種のアレルギーかのように苦手意識をもつ人が多いといいます。
本書ではそのような人のために、例えば、「大脳皮質」は構造とその働きや役割を分けて記載し、頭の中で整理しやすくしたり、複雑な「伝導路」は経路をポイントに分けて覚えやすくしたりといった、多くの工夫が凝らされています。また、学習者がつまずきやすい部分はコラムにして詳しく解説し、深く理解できるようになっています。
神経の学習に悩むすべての人に、特に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・柔道整復師・鍼灸師・看護師等の医療関係職を目指す学生、また再学習したい現職者にぜひ使っていただきたい1冊です。
Point1 シンプルな図と解説
本書の図はシンプルで、神経の構造が一目瞭然。
また、記載を必要最小限におさえているため、覚えるべき箇所が明確です。
Point2 音声つきで効率よく学習できる
通勤時間や休憩時間等に、音声を使った聴き流し学習ができます。
効率よく身につくので忙しい人にもおすすめ。
音声ファイル(MP3)は保存でき、通信できない場所でも使えます。
Point3 覚えやすいリスニング動画つき
音声とともに図が動くので、分かりやすさ・覚えやすさも倍増です。
スマホ等で繰り返し視聴している間に、中枢・末梢神経の基礎がしっかり身につきます。
『リスニング動画』サンプル(ダイジェスト版)
目次
本書の使い方
リスニング動画・音声ファイルの視聴について
Ⅰ 神経系の区分と構造
1.神経系の区分
1 中枢神経系 2 末梢神経系
2.神経を構成する細胞
1)神経細胞(ニューロン)
2)支持細胞
1 中枢神経系の支持細胞 2 末梢神経系の支持細胞
3)興奮伝導の3原則
4)神経伝達物質
Point 跳躍伝導
Point 運動単位とサイズの原理
Ⅱ 中枢神経
1.大脳(終脳)
1)大脳皮質
1 主要な溝 2 4つの領域
3 その他の領域 4 大脳皮質の機能区分
2)大脳基底核
3)大脳髄質
Point 大脳皮質の名称『葉・回・野』
Point 大脳辺縁系
Point 体部位局在とホムンクルス
Point 脳室系
2.小脳
1)脳幹との連結
2)小脳皮質
1 小脳皮質の3層構造 2 小脳皮質に投射する繊維
3)小脳髄質
3.間脳
1)視床
1 視床の機能 2 視床の構造
2)視床上部
3)視床下部
4.脳幹
1)中脳
2)橋
3)延髄
5.脊髄
1)脊髄の外形
2)脊髄の裂と溝
3)脊髄の内部構造
Point 灰白質・白質・網様体
Point なぜ頸椎は7つなのに頸神経は8本なのか
Point 中枢神経の伝導路
Ⅲ 末梢神経
1.末梢神経系の構成
1)末梢神経の結合組織
2)神経線維の分類
Point 末梢神経損傷の分類(seddon分類)
2.末梢神経の機能による区分
1体性神経 2臓性神経(自律神経)
Point 皮膚分節(デルマトーム)
3.自律神経(交感神経・副交感神経)の作用
Point 痛覚と関連痛
4.脳神経の概要と作用
Point 大脳動脈輪(ウィリスの動脈輪)
5.脊髄神経の構成
1 前根と後根 2 前枝と後枝
Point 前枝と後枝の成り立ち
6.脊髄神経の前枝
1)頸神経叢(C1~4)
1 皮枝(浅枝) 2 筋枝(深枝)
2)腕神経叢(C5~8,T1)
1 腕神経叢の構成 2 腕神経叢の各枝
3)胸神経(T1~12)
1 肋間神経
4)腰神経叢(T12~L4)
5)仙骨神経叢(L5~S3)
6)尾骨神経叢(S4・5)
Point 反射
Point 末梢神経の触察部位
7.脊髄神経の後枝
Point 伸張反射と相反神経支配
付録
脳の正常MRI
脊髄神経の前枝一覧表
索引
書評
評者:張本浩平(株式会社gene)
動画と音声と暗記シートを駆使した解剖学など今まで存在しているのだろうか?
個人的な考えであるが解剖というのは数学の定義とよく似ているものだと思っている.ものごとの前提条件となるということと,とにかく用語≒定義を覚えなければ話が進まないという点においてだ.そしてその理解できないものに対する冷たさにおいても.
学生時代のぼくに,通常の解剖書は優しくしてくれなかった.言ってもしようがないことだが,この本があれば,留年しなかったかもしれない.
そうか,町田先生は真剣に,そして温かく知識を届けようとしているのか.この本の構成=仕組みをみると勝手ながらそのように感じた.
実は,控えめに言ってぼくはこの本は革命的なものだと思っている.
今までの解剖書において,この届けるという視点(動画・音声・暗記シートを駆使して)を真剣に考えて,そして仕組みに落とし込んで出版された本は存在しない.
どれだけ高尚な理念も素晴らしい最先端の知識も使う人に届かなければ0なのだ.それは,1でも0.01でも0.0000001ですらない,0なのだ.
真剣に何かを変えようと志したときに知識は必然,届け方を考えることになる.
日本のリハビリテーションスタッフ教育にかかわる人においてこの事実にどれだけの人が腹落ちしているのだろうか?
繰り返す,届かなければ0なのだ.
どうやったら,正確な解剖学の知識が届くのか? そこに焦点を当てている本書であるが,だからといって内容が貧しいわけではない.学生はもちろん,臨床で解剖から遠ざかっているリハビリテーション専門職の要求にも十二分に答えられるものだ.そして,知識の届き方を考えている本書は当たり前であるが,とても理解しやすい.
学生のときに「解剖学は地図である」と最初の授業で教わった.
そう解剖学はよく,地図に例えられる.そして地図にはたくさんの種類があり,その目的に応じて地図を選ばなければならない.東京を散策するのに,世界地図は無意味だし,海外旅行するのに日本の住宅地図は必要ない.
こう考えてもらいたい.どのような正しさであろうと必要としている精度が違えばまったく意味のないものになってしまうのだ.
ただしそれらの地図はどれも間違っているわけではない,その目的に応じて多様な形態をとっているだけなのだ.
間違いがあるわけではない,違いがあるだけなのだ.ここを混同すると無意味な批判合戦になってしまう.それって,すごくリハビリテーション的ではないよね?
本書もこの本を切実に必要としている人に手に取ってほしい.本稿を読んでいる解剖学を網羅的に学びたい人,臨床に出ていて学びなおしたい人,国家試験の対策を立てたい人.
それらの人にとって福音となる解剖書だとぼくは考える.
「理学療法ジャーナル」vol.55 no.4(2021年4月号)(医学書院)より転載
【著】町田志樹(了德寺大学 健康科学部 理学療法学科・医学教育センター)
書籍の特徴 編