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第19回勇気ある経営大賞

事例でみる神経心理学的リハビリテーション

定価:6,160円(本体5,600円+税)

商品コード: ISBN978-4-89590-190-1

B5 / 384頁 / 2003年
【著】
バーバラ・ウィルソン(英国ケンブリッジ、MRC認知・脳科学部門上級科学 研究員)
【訳】
鎌倉矩子(国際医療福祉大学大学院教授)
山崎せつ子(国際医療福祉大学保健学部講師)

内容紹介

外傷性脳損傷、脳炎、脳卒中、低酸素脳症などにより重篤な脳損傷を被った20人の神経心理学的リハビリテーションを長年にわたり記録した事例集。

外傷性脳損傷、脳炎、脳卒中、低酸素脳症などにより重篤な脳損傷を被った20人の神経心理学的リハビリテーションを長年にわたり記録した事例集。発症前のライフスタイル、著者との出会いの経緯、症状、検査の内容、訓練や実験の考え方・手続き、患者の反応などについての著者による詳細な記録と、患者本人や家族によるレポートによって、患者のかかえる問題が本人や家族にとってどのような意味をもっているかが浮き彫りになる。
高次脳機能障害をかかえる患者とその家族を支援し、そのQOL向上を目指すすべてのリハビリテーション従事者には、患者に向きあう姿勢を含め、本書から学ぶものが必ずあるはず。

目次

訳者の序

モォ

I.背景
  1.患者および患者のかかえる問題
  2.リハビリテーションの原理と実践

II.記憶障害と共に生きる
  3.ジャック:健忘症と折り合う
  4.ジェイ:健忘症を代償する
  5.アレックス:無酸素脳症後のいくらかの回復と復職、そして結婚

III.記憶障害とその他の認知障害
  6.クライブ:常に目覚めたばかりの男
  7.マーティン:より全き人
  8.ローナ:認知能力の低下と筋緊張性ジストロフィー
  9.ジェイソン:脳炎の後で自立を学ぶ

IV.言語障害
  10.ビル:脳卒中発症から5年後にシンボルによるコミュニケーションを学ぶ
  11.ローレンス:言葉ではなくメッセージを聞け
  12.ロン:断片を拾い集めて

V.読むことの後天性障害の改善
  13.テッド:“ASTROCYTOMA”が読めて“DOG”が読めない男
  14.デーレック:銃創を負った後に再び読みを学ぶ
  15.ジェニー:落馬事故を乗り越えてQOLを取り戻す

VI.知覚と視空間の問題
  16.ポーラ:重度頭部外傷後に起こった理学療法への恐怖と物体認知の障害
  17.カースティ:視覚性失語か連合型失認か それとも意味記憶障害か
  18.リチャード:重度の記憶・認知障害にも負けず社交的だった青年
  19.ドーリィ:左側空間に注意を向けることの学習

VII.行動およびセルフ・ケア・スキル
  20.ジム:集中力の改善と問題行動の減少
  21.アンジェラ:四肢麻痺と構音障害を伴う女性のセルフ・ケア・スキルの向上
  22.セイラー:麻酔事故後遺症患者のセルフ・ケア・スキルの学習
  23.まとめ

  文献
  欧文索引
  和文索引

書評

二木 淑子(金沢大学医学部保健学科)
 待望の“Case Studies in Neuropsychological Rehabilitation”の日本語訳が出た.高次脳機能障害リハビリテーションの20の事例研究である.内容は記憶障害、言語障害、知覚と視空間の障害など、ほぼ認知・神経心理学の全域にわたり、セルフケア・スキル獲得だけでなく、その人らしくあることを根底に置いたリハビリテーションの過程である.
 私がこの本を知ったのはほんの数年前であるが、相当広範で深い知識がないと歯が立たない印象で、原文では到底全部を理解することはできなかった.忠実で緻密な用語の訳出など、大変な翻訳作業であっただろう.様々な人物の詳細なリハビリテーションの道程が、物語といってよいほど日本語に違和感がなく記されている.
 必ずしも作業療法士が全面に出ているわけではないが、リハビリテーションチームの役割もわかりやすい.老健や病院で働いている作業療法士は、痴呆などの認知障害や何かしら高次脳機能障害がある方たちに日々接することが多い.症状を分析・理解し、介入方法について理論的に検証することも自分たちの役割であると自覚し、悩みもあるだろう.膨大な検査内容に職種の違いを感じるし、急性期から維持期あるいは終末期にわたって経過を追える機会は現状ではなかなか得られないので、そのままマニュアル的に使える本ではない.しかし、かなり具体的ヒントを得ることができる.観察や検査結果から核心に迫っていく論理の着実さや明解さ、介入方法の発想の独自性は、こんな風にして考えていけばいいのだなと身近に力強いスーパーバイザーを得た思いがする.しかも「今ならこうして介入するだろう」と、既に成果を得た介入のさらなる展望までが書き込まれており、普通のテキストや研究論文とは違ったおもしろさだ.なによりも温厚で静かな情熱とはこうしたものか と、深い読後感のある貴重な一冊である.
『作業療法』22巻5号、p499(2003)