PT・OTのための脳卒中に対する臨床上肢機能アプローチ 弛緩から痙性・失調・肩の痛み、高次脳機能障害等に対するMovement -Therapy
電子版あり
定価:4,620円(本体4,200円+税)
商品コード: ISBN978-4-89590-796-5
内容紹介
脳卒中後に生じる上肢機能の症状へのアプローチをライブ感覚でお届け
弛緩、強い痙性、失調症や肩の痛み……。多くの脳卒中患者が上肢機能の症状に苦しんでいます。本書はそのような患者の治療に役立てるべく、全国の臨床家が培った知識と実践を結集して完成しました。臨場感ある治療場面の写真も豊富に掲載し、この一冊で症状別にアプローチのポイントが理解できます。明日からの臨床に活かしていただきたい1冊!
目次
執筆者一覧
はじめに・・・山本伸一
発刊によせて
ようやく捨てられました・・・稲田秀俊
可能性を模索するリハビリテーション・・・伊藤克浩
第1章 総 論
概論1:脳卒中の障害像の理解
概論2:臨床上肢機能アプローチの実践
第2章 支援技術Ⅰ 症状別への実践
1 弛 緩
①背臥位での運動療法・Activityアプローチ
②座位での運動療法・Activityアプローチ
③立位での運動療法・Activityアプローチ
2 軽度痙性
①運動療法アプローチ
②Activity・生活への展開アプローチ
3 中等度痙性
①運動療法アプローチ
②座位でのActivity・生活への展開アプローチ
4 重度痙性
①運動療法アプローチ
②Activity・生活への展開アプローチ
5 失調症
①体幹を中心とした運動療法アプローチ
②体幹を中心としたActivity・生活への展開アプローチ
③上肢を中心とした運動療法・Activity・生活への展開アプローチ
6 視床症状
①急性期~回復期における運動療法アプローチ
②急性期~回復期におけるActivity・生活への展開アプローチ
③慢性期における運動療法アプローチ
④慢性期におけるActivity・生活への展開アプローチ
第3章 支援技術Ⅱ 特殊例への実践
1 肩の痛み
①インピンジメント
②神経の圧迫
③ストレッチペイン
④腱板損傷
⑤夜間痛
2 視床症状による痛み・しびれ
3 短縮・固縮
4 浮腫手
第4章 支援技術Ⅲ 高次脳機能障害と上肢機能Movement‒Therapy
1 前頭葉と上肢機能アプローチ
2 半側空間無視と上肢機能アプローチ
3 失語症と上肢機能アプローチ
4 失行と上肢機能アプローチ
5 プッシャー症状と上肢機能アプローチ‒1 麻痺側への介入
6 プッシャー症状と上肢機能アプローチ‒2 非麻痺側への介入
はじめに・・・山本伸一
発刊によせて
ようやく捨てられました・・・稲田秀俊
可能性を模索するリハビリテーション・・・伊藤克浩
第1章 総 論
概論1:脳卒中の障害像の理解
概論2:臨床上肢機能アプローチの実践
第2章 支援技術Ⅰ 症状別への実践
1 弛 緩
①背臥位での運動療法・Activityアプローチ
②座位での運動療法・Activityアプローチ
③立位での運動療法・Activityアプローチ
2 軽度痙性
①運動療法アプローチ
②Activity・生活への展開アプローチ
3 中等度痙性
①運動療法アプローチ
②座位でのActivity・生活への展開アプローチ
4 重度痙性
①運動療法アプローチ
②Activity・生活への展開アプローチ
5 失調症
①体幹を中心とした運動療法アプローチ
②体幹を中心としたActivity・生活への展開アプローチ
③上肢を中心とした運動療法・Activity・生活への展開アプローチ
6 視床症状
①急性期~回復期における運動療法アプローチ
②急性期~回復期におけるActivity・生活への展開アプローチ
③慢性期における運動療法アプローチ
④慢性期におけるActivity・生活への展開アプローチ
第3章 支援技術Ⅱ 特殊例への実践
1 肩の痛み
①インピンジメント
②神経の圧迫
③ストレッチペイン
④腱板損傷
⑤夜間痛
2 視床症状による痛み・しびれ
3 短縮・固縮
4 浮腫手
第4章 支援技術Ⅲ 高次脳機能障害と上肢機能Movement‒Therapy
1 前頭葉と上肢機能アプローチ
2 半側空間無視と上肢機能アプローチ
3 失語症と上肢機能アプローチ
4 失行と上肢機能アプローチ
5 プッシャー症状と上肢機能アプローチ‒1 麻痺側への介入
6 プッシャー症状と上肢機能アプローチ‒2 非麻痺側への介入
書評
評者:酒向正春(ねりま健育会病院、病院長)
もう20 年前になる。以前勤めていた回復期リハビリテーション病院に、山本伸一先生が上肢機能アプローチの手技指導に来ていた。右肩の可動域低下を感じていた私に、山本先生は、「先生、右肩の筋膜が癒着してますよ」と告げ、徒手的に可動域を完全に回復させた。臨床的に感動であった。
20 年経ち、その山本先生が日本作業療法士協会 会長に就任し、『脳卒中に対する臨床上肢機能アプローチ』を編著した。急いで読みたいと思った。なぜなら、上肢機能障害に対する日本の治療レベルと方向性を理解できるからだ。その結果は予想通り、理学療法士・作業療法士だけでなく、すべてのリハビリテーション医が読むべき臨床本だと感じた。そして、すべての理学療法士・作業療法士が本書の上肢機能アプローチを理解して、臨床でルーチンに実践してほしいと切望する。
脳卒中後の上肢機能障害は、その後の人生を変えてしまう重篤な障害である。可能であれば、元通りに回復させてあげたい。しかし、それは簡単なことではない。上肢機能障害は脳卒中などの脳損傷により生じる。その損傷の部位や程度により、種々な重症度の運動障害、感覚障害、調節障害、高次脳機能障害が生じて、上肢機能障害を発生させるからである。さらに、同程度の脳損傷であっても、一人ひとりの心身のバックグラウンドにより、症状や回復する過程も異なる。そこで、麻痺が弛緩から痙性へと変わる過程や、失調症状、肩の疼痛、痙縮、浮腫、高次脳機能障害等の評価が大切であり、一人ひとりへのオーダーメイドのMovement‒Therapy が必要になる。その極意が本書に書かれている。
本書は、総論として、脳卒中患者の障害像の理解を促している。上肢機能を治療するために知っておくべきこととして、身体の全身における相互作用を診ることと、姿勢制御と精緻運動のプログラムシステムを理解して「安定性」と「運動性」の姿勢セットを診ることを強調する。障害された上肢帯の問題としては、翼状肩甲、肩甲上腕リズムの崩壊、肩の痛みに注意したMovement‒Therapy を解説している。
そして、脳卒中に対する臨床上肢機能アプローチの原則としては、体幹伸展、肩関節屈曲・外転、肘伸展の組み合わせで、麻痺側の長い上肢と手を目指すことが重要であり、それを上肢の長さのスキーマ法則として解説している。他に大切な9 つの基本法則がある。すなわち、120 度のスキーマ法則、身体接触のスキーマ法則、Scapula スキーマの法則、Supine関連の段階づけの法則、Hand スキーマ:圧迫の法則、リーチと肘の法則、能動的ねじれ回旋のスキーマ法則、リボンの法則、Handスキーマ:接触と空間定位の法則である。これらの10 法則を詳細に説明している。この10 法則を理解して上肢機能の臨床を実践すれば、すべての理学療法士と作業療法士が良質な治療介入ができると確信する。
各論としては、症状別のアプローチとして、弛緩性麻痺、軽度痙性・中等度痙性・重度痙性麻痺、失調症、視床症状、肩の疼痛、視床障害による痛みやしびれ、短縮と固縮、浮腫手に対するMovement‒Therapy が詳細に解説されている。さらに、高次脳機能障害に関しては、前頭葉、側空間無視、失語症、失行、プッシャー症状等に対する上肢機能アプローチの有用性が臨床的に示されており、わかりやすい。
脳卒中に対する臨床上肢機能のアプローチで大切なことは、本書にすべて書かれてある。すべてのリハビリテーション医療従事者や上肢機能障害で困っている皆さんにお薦めしたい一冊である。
「作業療法ジャーナル」vol.58 no.3(2024年3月号)(三輪書店)より転載
もう20 年前になる。以前勤めていた回復期リハビリテーション病院に、山本伸一先生が上肢機能アプローチの手技指導に来ていた。右肩の可動域低下を感じていた私に、山本先生は、「先生、右肩の筋膜が癒着してますよ」と告げ、徒手的に可動域を完全に回復させた。臨床的に感動であった。
20 年経ち、その山本先生が日本作業療法士協会 会長に就任し、『脳卒中に対する臨床上肢機能アプローチ』を編著した。急いで読みたいと思った。なぜなら、上肢機能障害に対する日本の治療レベルと方向性を理解できるからだ。その結果は予想通り、理学療法士・作業療法士だけでなく、すべてのリハビリテーション医が読むべき臨床本だと感じた。そして、すべての理学療法士・作業療法士が本書の上肢機能アプローチを理解して、臨床でルーチンに実践してほしいと切望する。
脳卒中後の上肢機能障害は、その後の人生を変えてしまう重篤な障害である。可能であれば、元通りに回復させてあげたい。しかし、それは簡単なことではない。上肢機能障害は脳卒中などの脳損傷により生じる。その損傷の部位や程度により、種々な重症度の運動障害、感覚障害、調節障害、高次脳機能障害が生じて、上肢機能障害を発生させるからである。さらに、同程度の脳損傷であっても、一人ひとりの心身のバックグラウンドにより、症状や回復する過程も異なる。そこで、麻痺が弛緩から痙性へと変わる過程や、失調症状、肩の疼痛、痙縮、浮腫、高次脳機能障害等の評価が大切であり、一人ひとりへのオーダーメイドのMovement‒Therapy が必要になる。その極意が本書に書かれている。
本書は、総論として、脳卒中患者の障害像の理解を促している。上肢機能を治療するために知っておくべきこととして、身体の全身における相互作用を診ることと、姿勢制御と精緻運動のプログラムシステムを理解して「安定性」と「運動性」の姿勢セットを診ることを強調する。障害された上肢帯の問題としては、翼状肩甲、肩甲上腕リズムの崩壊、肩の痛みに注意したMovement‒Therapy を解説している。
そして、脳卒中に対する臨床上肢機能アプローチの原則としては、体幹伸展、肩関節屈曲・外転、肘伸展の組み合わせで、麻痺側の長い上肢と手を目指すことが重要であり、それを上肢の長さのスキーマ法則として解説している。他に大切な9 つの基本法則がある。すなわち、120 度のスキーマ法則、身体接触のスキーマ法則、Scapula スキーマの法則、Supine関連の段階づけの法則、Hand スキーマ:圧迫の法則、リーチと肘の法則、能動的ねじれ回旋のスキーマ法則、リボンの法則、Handスキーマ:接触と空間定位の法則である。これらの10 法則を詳細に説明している。この10 法則を理解して上肢機能の臨床を実践すれば、すべての理学療法士と作業療法士が良質な治療介入ができると確信する。
各論としては、症状別のアプローチとして、弛緩性麻痺、軽度痙性・中等度痙性・重度痙性麻痺、失調症、視床症状、肩の疼痛、視床障害による痛みやしびれ、短縮と固縮、浮腫手に対するMovement‒Therapy が詳細に解説されている。さらに、高次脳機能障害に関しては、前頭葉、側空間無視、失語症、失行、プッシャー症状等に対する上肢機能アプローチの有用性が臨床的に示されており、わかりやすい。
脳卒中に対する臨床上肢機能のアプローチで大切なことは、本書にすべて書かれてある。すべてのリハビリテーション医療従事者や上肢機能障害で困っている皆さんにお薦めしたい一冊である。
「作業療法ジャーナル」vol.58 no.3(2024年3月号)(三輪書店)より転載
【編著】山本伸一