〈急性期栄養療法+リハビリテーションシリーズ〉Ⅰ エキスパートが伝授する 急性期栄養療法の理論と方法
電子版あり
定価:4,400円(本体4,000円+税)
商品コード: ISBN978-4-89590-803-0
内容紹介
もやもや臨床からの脱出!栄養療法の根拠がよくわかり、明日からの実践が変わる1冊!
本書には栄養療法の基礎、歴史、潮流、実践のためのTipsを全て盛り込みました。
急性期栄養療法は複雑で混沌としていることは否めませんが、生化学や生理学の視点をもって挑む意義があり、学ぶほどその深淵にハマり、臨床家の心を刺激します。
臨床家である筆者がのめり込んだ急性期栄養療法の深淵に迫る一冊。
急性期栄養療法をしっかり学びたいすべての人に一読をお勧めします。
目次
栄養療法の基礎編 ~ここはゼッタイ押さえておこう!~
第1章 急性期栄養療法に必須な栄養の基本!
1 栄養成分とエネルギー代謝~炭水化物,脂質,タンパク質の違いは何か~
1 はじめに
2 炭水化物
3 脂質
4 タンパク質・アミノ酸
2 タンパク質と体形成~筋タンパク合成の生理学~
1 はじめに
2 筋タンパク合成とは何か
3 筋タンパク合成の直接的評価
4 筋タンパク合成の生理学
3 急性期における栄養代謝の変化
1 はじめに
2 飢餓時の栄養代謝
3 侵襲時の栄養代謝
4 侵襲時の消費エネルギー量変化
5 悪液質と栄養代謝
6 急性期栄養療法と免疫
7 persistent inflammation,immuno-suppression and catabolism syndrome
第2章 炭水化物,脂質,タンパク質の発展的知識
1 効率的なエネルギー利用,筋タンパク合成の活用のために
1 はじめに
2 非タンパク質カロリーとタンパク質
3 炭水化物/脂質によるエネルギー利用
4 糖質エネルギー供給を極限まで活用する方法
5 脂質エネルギー供給を極限まで利用する方法
6 タンパク質と体形成作用~アミノ酸やタンパク質種の特徴を筋タンパク合成で理解する~
急性期栄養療法編 ~急性期栄養療法の臨床~
第3章 急性期栄養療法の潮流を楽しく学ぶ!
1 急性期栄養療法の歴史
1 はじめに
2 経腸栄養の歴史
3 静脈栄養の歴史
2 最新の急性期栄養療法の押さえるべきポイント
1 はじめに
2 血糖管理~高血糖の害悪とIntensive Insulin Therapy~
3 経腸栄養vs静脈栄養~腸管免疫とbacterial translocation~
4 エネルギー投与の漸増計画~ebb phaseとflow phase~
5 permissive underfeeding ~overfeedingの害悪とオートファージー~
6 異化を考えるエネルギー投与設計~内因性エネルギー供給と外因性エネルギー供給~
7 エネルギー負債~underfeedingの限界と感染合併症~
8 タンパク質量議論~underfeeding下にこそ高タンパク質量?~
9 特定の栄養素やサプリメント~ immune-modulating diet/pharmaco nutrition~
第4章 急性期栄養療法のTips
1 エビデンスに基づいた急性期栄養療法の実践
1 はじめに
2 「的を射て」「実行可能な」栄養計画を立てよう!
3 超大事!? ~栄養アセスメント~
4 まず栄養投与経路を決める~経腸栄養vs静脈栄養~
5 目標栄養投与量を設計しよう~目標エネルギー量,タンパク質量~
6 漸増計画立案
7 SPNによる目標エネルギー量達成
8 経腸栄養の持続投与vs間欠投与
9 サプリメントの補充~ビタミン,微量元素,pharmaco nutrition
10 急性期栄養療法は急性期以降にも目を向けねばならない!
2 急性期栄養療法をさらに高めるための発展的Tips
1 プロトコールと管理栄養士介入
2 栄養療法のモニタリング?
3 急性期栄養療法のアウトカムを評価しよう!
4 消化管トラブルへの対応~経腸栄養合併症を管理する~
5 離床・リハビリテーションを組み合わせる栄養療法
第5章 急性期栄養療法のサポート
1 栄養計算をしよう
2 栄養プロトコールのつくり方
3 実際の急性期栄養療法の計算・設計ドリル
第1章コラム
低炭水化物ダイエットと糖質制限
ミトコンドリア
CoA
食物繊維
コレステロール
MCT
脂肪酸
脂質代謝を基本とする臓器
タンパク質でも太る?
ビタミン,ミネラル
筋トレにおけるタンパク質摂取の重要性
ダイエット時のマイナスカロリー
敗血症という侵襲
無理なボディビルドの末の死
第2章コラム
クレアチンサプリメント
低炭水化物ダイエット
有酸素運動と無酸素運動
内臓脂肪と皮下脂肪
ドカ食いはダメ
プロテインは運動直後?直前?
ペプチド型栄養剤
夜のガゼイン
BCAAの黄金比
第3章コラム
ONS
医薬品と食品
7日目以降でもまだ具合の悪い患者にfull feedingを行うべきなのか?
日本版敗血症診療ガイドライン2020におけるタンパク質投与量推奨
第4章コラム
gastric residual volume(GRV)
アルブミンを用いた栄養アセスメントツール
実体重,理想体重,調整体重
refeeding syndrome
trophic feeding
NST
われわれの栄養モニタリング・体重計
エネルギー(熱量)とJ ⇔ kcal
消費エネルギー量と安静時基礎代謝量
呼吸商からの内因性エネルギー供給推定戦略
直接熱量計測
重症病態時の止痢薬
第5章コラム
「急性期栄養療法N」の使い方
おわりに
索引
第1章 急性期栄養療法に必須な栄養の基本!
1 栄養成分とエネルギー代謝~炭水化物,脂質,タンパク質の違いは何か~
1 はじめに
2 炭水化物
3 脂質
4 タンパク質・アミノ酸
2 タンパク質と体形成~筋タンパク合成の生理学~
1 はじめに
2 筋タンパク合成とは何か
3 筋タンパク合成の直接的評価
4 筋タンパク合成の生理学
3 急性期における栄養代謝の変化
1 はじめに
2 飢餓時の栄養代謝
3 侵襲時の栄養代謝
4 侵襲時の消費エネルギー量変化
5 悪液質と栄養代謝
6 急性期栄養療法と免疫
7 persistent inflammation,immuno-suppression and catabolism syndrome
第2章 炭水化物,脂質,タンパク質の発展的知識
1 効率的なエネルギー利用,筋タンパク合成の活用のために
1 はじめに
2 非タンパク質カロリーとタンパク質
3 炭水化物/脂質によるエネルギー利用
4 糖質エネルギー供給を極限まで活用する方法
5 脂質エネルギー供給を極限まで利用する方法
6 タンパク質と体形成作用~アミノ酸やタンパク質種の特徴を筋タンパク合成で理解する~
急性期栄養療法編 ~急性期栄養療法の臨床~
第3章 急性期栄養療法の潮流を楽しく学ぶ!
1 急性期栄養療法の歴史
1 はじめに
2 経腸栄養の歴史
3 静脈栄養の歴史
2 最新の急性期栄養療法の押さえるべきポイント
1 はじめに
2 血糖管理~高血糖の害悪とIntensive Insulin Therapy~
3 経腸栄養vs静脈栄養~腸管免疫とbacterial translocation~
4 エネルギー投与の漸増計画~ebb phaseとflow phase~
5 permissive underfeeding ~overfeedingの害悪とオートファージー~
6 異化を考えるエネルギー投与設計~内因性エネルギー供給と外因性エネルギー供給~
7 エネルギー負債~underfeedingの限界と感染合併症~
8 タンパク質量議論~underfeeding下にこそ高タンパク質量?~
9 特定の栄養素やサプリメント~ immune-modulating diet/pharmaco nutrition~
第4章 急性期栄養療法のTips
1 エビデンスに基づいた急性期栄養療法の実践
1 はじめに
2 「的を射て」「実行可能な」栄養計画を立てよう!
3 超大事!? ~栄養アセスメント~
4 まず栄養投与経路を決める~経腸栄養vs静脈栄養~
5 目標栄養投与量を設計しよう~目標エネルギー量,タンパク質量~
6 漸増計画立案
7 SPNによる目標エネルギー量達成
8 経腸栄養の持続投与vs間欠投与
9 サプリメントの補充~ビタミン,微量元素,pharmaco nutrition
10 急性期栄養療法は急性期以降にも目を向けねばならない!
2 急性期栄養療法をさらに高めるための発展的Tips
1 プロトコールと管理栄養士介入
2 栄養療法のモニタリング?
3 急性期栄養療法のアウトカムを評価しよう!
4 消化管トラブルへの対応~経腸栄養合併症を管理する~
5 離床・リハビリテーションを組み合わせる栄養療法
第5章 急性期栄養療法のサポート
1 栄養計算をしよう
2 栄養プロトコールのつくり方
3 実際の急性期栄養療法の計算・設計ドリル
第1章コラム
低炭水化物ダイエットと糖質制限
ミトコンドリア
CoA
食物繊維
コレステロール
MCT
脂肪酸
脂質代謝を基本とする臓器
タンパク質でも太る?
ビタミン,ミネラル
筋トレにおけるタンパク質摂取の重要性
ダイエット時のマイナスカロリー
敗血症という侵襲
無理なボディビルドの末の死
第2章コラム
クレアチンサプリメント
低炭水化物ダイエット
有酸素運動と無酸素運動
内臓脂肪と皮下脂肪
ドカ食いはダメ
プロテインは運動直後?直前?
ペプチド型栄養剤
夜のガゼイン
BCAAの黄金比
第3章コラム
ONS
医薬品と食品
7日目以降でもまだ具合の悪い患者にfull feedingを行うべきなのか?
日本版敗血症診療ガイドライン2020におけるタンパク質投与量推奨
第4章コラム
gastric residual volume(GRV)
アルブミンを用いた栄養アセスメントツール
実体重,理想体重,調整体重
refeeding syndrome
trophic feeding
NST
われわれの栄養モニタリング・体重計
エネルギー(熱量)とJ ⇔ kcal
消費エネルギー量と安静時基礎代謝量
呼吸商からの内因性エネルギー供給推定戦略
直接熱量計測
重症病態時の止痢薬
第5章コラム
「急性期栄養療法N」の使い方
おわりに
索引
書評
急性期の代謝変動と栄養療法の理論と実践が理解できる名書
評者:小谷穣治(神戸大学大学院医学研究科外科系講座 災害・救急医学分野 教授/ 救命救急センター センター長)
太古の昔から大病をしたときに水分や食餌、薬草を摂取することで回復することは、家伝や村の長寿の秘伝として、または一般的な知識として人類に代々伝えられてきました。しかし、これらの治療は長らく経験に基づいたものであり、栄養投与の機序の解明と治療を飛躍的に進めた革命は1968年のStanley J. Dudrick博士による中心静脈栄養の発明でしょう。強制的な静脈栄養投与により予後を改善することができること、そして奇しくもその後腸管栄養の優位性が示されてきました。当時の研究は「風が吹けば桶屋が儲かる」というような機序の解明がない研究が多かったのですが、1980年代から栄養分子生物学的手法の発達に伴って免疫機能や細胞内シグナルを対象とした機序の解明が徐々に進み,その効果を確かめるための臨床試験が行われ、それらのエビデンスに基づいて1990年代から治療の標準化、すなわちガイドラインが作成されるようになりました。最近では、栄養投与は治療の一環と捉えられ、従来の「栄養管理」から「栄養療法」、「栄養治療」と呼ばれるようになっています。
さて、ガイドラインの推奨はあくまでも過去のエビデンスに基づいた参考書であり、実際の患者さんの病態は様々ですので、医療者は栄養投与をしたら、またはしなかったら生体内でどのように代謝が変わり、次に何が起きるのかを推察しなければなりません。そのうえでその推奨どおりにするのがいいか、またはモディファイするかを考えて行動を決定するべきであり、ハーパー・生化学のような基礎的な知識はやはり必要なのです。
さらに、頭の中で考えた理論を実際の患者さんに適用するときに自信を持って「これでいい」と判断ができるようになるためには経験の積み重ねしかありません。理論を実践に移して結果を経験する作業を繰り返して、ようやく実感を伴って治療方針を決める力、そしてチームの仲間に理解させ議論させる力、そして患者さんや家族に納得してもらえる力が身についていくのです。
本書の著者である中村先生はまさに栄養療法の理論を知り、それらを臨床で実践してきた文武両道の医師です。そして、中村先生は本書の中で、栄養療法の歴史をリスペクトしながら、最新の栄養療法の理論とそれを実践に移していくための方法を、急性期の医療にかかるすべての領域でわかりやすく解説されています。さらに、所々に「実は…」というトリビアの泉、でも結構役に立つ裏知識の解説があり、読者の皆様がこれらを知ることで治療チームの仲間や患者さん、患者さんの家族に一段深く信頼されることに大いに役立つでしょう。
本書は現在発刊されている急性期の栄養療法のテキストの中でもわかりやすく、実践にも応用できる情報が詰まった良書だと思います。皆様、ぜひ手にとって臨床現場で応用してください。
評者:小谷穣治(神戸大学大学院医学研究科外科系講座 災害・救急医学分野 教授/ 救命救急センター センター長)
太古の昔から大病をしたときに水分や食餌、薬草を摂取することで回復することは、家伝や村の長寿の秘伝として、または一般的な知識として人類に代々伝えられてきました。しかし、これらの治療は長らく経験に基づいたものであり、栄養投与の機序の解明と治療を飛躍的に進めた革命は1968年のStanley J. Dudrick博士による中心静脈栄養の発明でしょう。強制的な静脈栄養投与により予後を改善することができること、そして奇しくもその後腸管栄養の優位性が示されてきました。当時の研究は「風が吹けば桶屋が儲かる」というような機序の解明がない研究が多かったのですが、1980年代から栄養分子生物学的手法の発達に伴って免疫機能や細胞内シグナルを対象とした機序の解明が徐々に進み,その効果を確かめるための臨床試験が行われ、それらのエビデンスに基づいて1990年代から治療の標準化、すなわちガイドラインが作成されるようになりました。最近では、栄養投与は治療の一環と捉えられ、従来の「栄養管理」から「栄養療法」、「栄養治療」と呼ばれるようになっています。
さて、ガイドラインの推奨はあくまでも過去のエビデンスに基づいた参考書であり、実際の患者さんの病態は様々ですので、医療者は栄養投与をしたら、またはしなかったら生体内でどのように代謝が変わり、次に何が起きるのかを推察しなければなりません。そのうえでその推奨どおりにするのがいいか、またはモディファイするかを考えて行動を決定するべきであり、ハーパー・生化学のような基礎的な知識はやはり必要なのです。
さらに、頭の中で考えた理論を実際の患者さんに適用するときに自信を持って「これでいい」と判断ができるようになるためには経験の積み重ねしかありません。理論を実践に移して結果を経験する作業を繰り返して、ようやく実感を伴って治療方針を決める力、そしてチームの仲間に理解させ議論させる力、そして患者さんや家族に納得してもらえる力が身についていくのです。
本書の著者である中村先生はまさに栄養療法の理論を知り、それらを臨床で実践してきた文武両道の医師です。そして、中村先生は本書の中で、栄養療法の歴史をリスペクトしながら、最新の栄養療法の理論とそれを実践に移していくための方法を、急性期の医療にかかるすべての領域でわかりやすく解説されています。さらに、所々に「実は…」というトリビアの泉、でも結構役に立つ裏知識の解説があり、読者の皆様がこれらを知ることで治療チームの仲間や患者さん、患者さんの家族に一段深く信頼されることに大いに役立つでしょう。
本書は現在発刊されている急性期の栄養療法のテキストの中でもわかりやすく、実践にも応用できる情報が詰まった良書だと思います。皆様、ぜひ手にとって臨床現場で応用してください。
【著】中村謙介(横浜市立大学附属病院 集中治療部 准教授)