3,000円以上の購入で
送料無料

到着日時のご指定は出来ません
第19回勇気ある経営大賞

あなたは物品を操作する手の動作を分析できますか? 手本位が解釈できる『鎌倉方式』の理解と応用

電子版あり

定価:3,850円(本体3,500円+税)

商品コード: ISBN978-4-89590-815-3

B5 /142頁 / 2024年
【編著】中田眞由美

NOMA ハンド・ラボ 公式サイト
※外部サイトに移動します。
数量
電子版販売サイト
(外部の各販売サイトに移動します)
電子書籍の販売サイト 電子書籍の販売サイト 電子書籍の販売サイト

内容紹介

巧緻性動作の、その先へ―前書『手を診る力をきたえる』の演習版で『鎌倉方式』をつかいこなせるようになろう

あなたは、患者さんが物品を操作する動作を分析できているだろうか。
手の回復に見合った、日常生活を獲得するための課題練習を提供できているだろうか。
障害手の評価が、手の動作分析ではなく、関節の動きの分析になっていないだろうか。
手の動作の、なにを、どのような目的と根拠で、どのような結果を目指して訓練しているのか、経過の中で何がよくなったのか、患者さんや他職種に説明することができ、そして共有できているだろうか。
練習課題として動作の獲得を目指すならば、セラピストも患者も障害手が有している現時点の特性を知るとともに、目標となる動作の特徴を詳しく理解する必要がある。そのために、セラピストは”手そのもの”を直に観察し、表記し、その動作の特徴を説明できる力を備える必要がある。
本書ではこのことを可能とする “手本位”の動作分析・表記方式である『鎌倉方式』を紹介するともに、『鎌倉方式』を習得するための演習を提供し、応用実践例や身近な手の動作の特徴の理解、練習課題の例を提案する。
あいまいな巧緻性動作訓練から脱却し、この方式を使って、手の動作の本質を見る目を養おう。

目次

第1章 まずカードの繰り出し動作を分析してみよう
 1・1 関節運動の視点から観察と記述を試みる
  1・1・1 カードの繰り出しA
  1・1・2 カードの繰り出しB
  1・1・3 カードの繰り出しA,Bにおける関節運動
 1・2 フォームとパターンの視点から動作の観察と記述を試みる
  1・2・1 カードの繰り出しAの分析と記述
  1・2・2 カードの繰り出しBの分析と記述
 1・3 鎌倉方式の特色
  ◆ 鎌倉方式では手の“全体”と“部分”が明らかになる
  ◆ 鎌倉方式では“静”と“動”が明らかになる
  ◆ 鎌倉方式は“指の分離”の状況を明らかにする
  ◆ 鎌倉方式は物品を扱う動作のための表記法である
  ◆ 鎌倉方式は動作の“理解”をたすける
 1・4 まとめ

第2章 鎌倉方式とは―手のフォームと動きのパターンを表記する方法
 2・1 “手本位”の動作学
 2・2 静的な過程と動的な過程
 2・3 把握のフォームとその表記
  2・3・1 把握とは
  2・3・2 把握のフォームの分類
  2・3・3 把握の類型とその特徴
  2・3・4 類型に当てはまらない場合の対処法
  2・3・5 把握の類型と物品・個人との関係
 2・4 非把握のフォームとその表記
  2・4・1 非把握とは
  2・4・2 非把握のフォームの分類
  2・4・3 非把握の類型とその特徴
  2・4・4 “受け身の手”について
 2・5 手の動きのパターンとその表記
  2・5・1 手の動きのパターンとは
  2・5・2 動作の区間とその分析
  2・5・3 指列の動きとその種類
  2・5・4 母指列の特殊性
  2・5・5 5本の指列の動きを“1つのパターン”に変換する方法(XYZ連記法)
  2・5・6 反力の影響下にある指列の扱い
  2・5・7 実動作への適用
  2・5・8 “指の分離”について
  2・5・9 指の分離が生じる状況とは
 2・6 まとめ

第3章 基礎演習―鎌倉方式を使いこなすために
 3・1 基礎演習1:把握のフォーム
  3・1・1 鉛筆を使って把握のフォームをつくってみよう
  3・1・2 鉛筆を用いた把握のフォームの形成結果
 3・2 基礎演習2:非把握フォーム
  3・2・1 非把握のフォームをつくり,以下の動作を行ってみよう
  3・2・2 非把握のフォームの形成結果
 3・3 基礎演習3:指列の動き
  3・3・1 指列の動きを読みとってみよう
  3・3・2 関節運動の観察と指列の動きへの変換の結果
 3・4 基礎演習4:動きのパターン
  3・4・1 XYZ連記法を使って動きのパターンに変換しよう
 3・5 まとめ

第4章 私たちはこんなふうに手を動かしている―鎌倉方式を使うとわかる手の動作の詳細
 4・1 はさみを使う
  4・1・1 はさみを開閉する手を分析してみよう
  4・1・2 はさみを使う手を観察するポイントとは
  4・1・3 練習課題の進め方
 4・2 机上のコップを取り上げる
  4・2・1 コップを上から掴む動作を分析してみよう
  4・2・2 コップを側面から掴む動作を分析してみよう
  4・2・3 接近方法の異なる“コップを掴む動作”を比較してみよう
  4・2・4 コップを掴む動作を観察するポイントとは
  4・2・5 練習課題の進め方
 4・3 筆記具を使う
  4・3・1 鉛筆を使う手を分析してみよう
  4・3・2 鉛筆を使う手を観察するポイントとは
  4・3・3 練習課題の進め方
 4・4 箸を使う
  4・4・1 手は箸をどのように開閉しているのだろうか
  4・4・2 箸の開閉動作(AV型)を観察するポイントとは
 4・5 手袋をはめる
  4・5・1 手はどのようにして手袋をはめているだろうか
  4・5・2 手袋をはめる動作を観察するポイントとは
  4・5・3 練習課題の進め方
 4・6 まとめ

第5章 “治療用具”を使う意味―鎌倉方式による分析から物品操作の基本を理解しよう
 5・1 円錐形物体の把握
  5・1・1 どのような把握のフォームで持っているだろうか
  5・1・2 把握のフォームの維持と変換
  5・1・3 円錐形ブロックから日常物品の把握へと練習を進めよう
 5・2 2個のボールを掴む動作
  5・2・1 2個のゴルフボールを掴む動作を分析してみよう
  5・2・2 2個のゴルフボールを掴む動作の特徴とは
  5・2・3 2個のゴルフボール掴み動作を観察するポイントをつかもう
  5・2・4 練習課題としての意義と練習方法―2個のボール掴み
 5・3 2本の鉛筆を取り上げる動作
  5・3・1 2本の鉛筆を取り上げる動作を分析してみよう
  5・3・2 2本の鉛筆を取り上げる動作の特徴とは
  5・3・3 2本の鉛筆を取り上げる動作を観察するポイントをつかもう
  5・3・4 2種類の物体の取り上げ動作を比較してみよう―難易の度合いが高いのはどちらか,またその理由は?
  5・3・5 練習課題としての意義と練習方法―2本の鉛筆の取り上げ
 5・4 手の中で物品を回転する動作―ペグの回転
  5・4・1 ペグを回転する動作を分析してみよう
  5・4・2 ペグを回転する手の動作を比較してみよう
  5・4・3 ペグを回転する動作を練習する意義とは
 5・5 手の中で物品を回転する動作―コインの回転
  5・5・1 コインを回転する動作の分析
  5・5・2 コインを回転する動作の特徴とは
  5・5・3 コインを回転する動作を観察するポイントをつかもう
  5・5・4 練習課題としての意義と練習方法―コインの回転動作
 5・6 手の中で物品を持ち直す動作―鉛筆の持ち直し
  5・6・1 鉛筆を持ち直す動作の分析
  5・6・2 鉛筆を持ち直す動作の特徴とは
  5・6・3 鉛筆の持ち直し動作を観察するポイントをつかもう
  5・6・4 練習課題としての意義と練習方法―鉛筆の持ち直し動作
 5・7 手に載せた2個の物体をまわす動作―2個のボールまわし
  5・7・1 2個のボールを手の中でまわす動作を分析してみよう
  5・7・2 2個のボールをまわす動作の特徴とは
  5・7・3 2個のボールをまわす動作を観察するポイントをつかもう
  5・7・4 練習課題としての意義とその練習方法―2個のボールまわし
 5・8 まとめ

第6章 動作のどこを変えるのか―鎌倉方式を使って見つける箸操作練習の要点
 6・1 箸操作練習
  6・1・1 健常者の箸操作パターンの類型
 6・2 箸操作の練習に“ピンセット型箸”を使う意味はどこにあるか
  6・2・1 ピンセット型箸の操作
  6・2・2 介助箸と普通箸を使った手の動作を比較してみよう
 6・3 箸の操作パターンを変更してみよう
  6・3・1 箸操作パターンのAV型とAI型の違いについて理解しよう
  6・3・2 AI型からAV型の箸操作パターンに変更してみよう
 6・4 箸操作の練習方法とは
 6・5 まとめ

文献一覧

索引

付録 早見表:手のかたちと動き(静止のフォームと動きのパターン)


書評

すべての領域・分野で働く作業療法士に読んでほしい。
評者:齋藤佑樹(仙台青葉学院大学,作業療法士)

 本書は、鎌倉矩子氏、中田眞由美氏が2013 年に編集した『手を診る力をきたえる』(三輪書店)の演習版に位置づけられている。タイトルには、「あなたは物品を操作する手の動作を分析できますか?」とある。自信をもって「Yes」と言えない。
 望ましい介入方法を導くためには、ホリスティックな視点に加え、各要素についての緻密な評価が欠かせない。介入の質や推論の質を高めるためには、まず一つひとつの評価の質を高めることが不可欠である。
 本書のテーマ、“手本位”の動作分析・表記方式である「鎌倉方式」は、昨年惜しまれながらこの世を去った鎌倉矩子氏の研究である。長年「一番弟子」として鎌倉氏と協働した中田氏が、2 人の研究成果を臨床応用しやすいかたちで世に出してくれた。
 本書は全6 章から成る。身近な動作を通して「鎌倉方式」を学びつつ、手の動作の詳細や物品操作の基礎、練習方法等、「鎌倉方式」を使いこなすための演習課題が充実している。「巧緻動作訓練」のように、伝統的に信じられ、採用され続けてきた練習のプロトコルを根本から考え直す場面が何度もあった。
 読み進める中で、本書から学ぶものは、“手本位”の動作分析・表記方式の他にもう一つあると思った。それは、これまでを築き上げた両氏の真摯な姿勢である。「鎌倉方式」を確立する道程で、鎌倉氏・中田氏は、手の構えや動きを捉えるために、16 mm フィルムを用いて、また、数万枚の写真を体育館ほどの広さの部屋に広げ、分類・分析作業を行ったという。もちろんスマホやデジカメなどまだ世に存在しない時代に、である。未開の大海を渡り切った2 人に敬仰の念を抱き、その航海に想いを馳せる。
 2 人が確立した研究の集大成といえる本書は、手を診る力を鍛える知識や演習課題だけでなく、作業療法を牽引してきた2 人のパイオニアの覚悟と情熱が詰まっている。幸いにも私たちは、2 人の巨人の肩の上に立つことができる。本書はすべての領域・分野で働く作業療法士に読んでほしい。どんな領域・分野であれ、作業療法は作業の力で人と世界をつなぐ仕事であり、手は世界との接点なのだから。
 2016 年の4 月、三輪書店の創業者である三輪 敏氏が、鎌倉氏との食事の席を設けてくれたことがあった。「日本の作業療法の母」は丁寧に言葉を選びながら、事実を正確に語る人だった。帰り際、どうしても鎌倉氏の言葉が欲しくて、持参したボロボロの『作業療法の世界』(三輪書店)と万年筆を差し出した。鎌倉氏は、しばらく考えた後で、「信じるままに進め」と書いてくれた。
 本書を読み終えた後、久しぶりに『作業療法の世界』の表紙をめくり、鎌倉氏の言葉を見た。「何が正しいことなのか実証することから逃げるな」という意味なのだと思った。鎌倉氏、中田氏の生き方がそう思わせてくれた。

「作業療法ジャーナル」vol.58 no.7 (2024年7月号) (三輪書店)より転載