3,000円以上の購入で
送料無料

到着日時のご指定は出来ません
第19回勇気ある経営大賞

改訂版 真に役立つ研究のデザインと統計処理―統計学の論理的なストーリーを理解する

電子版あり

定価:5,830円(本体5,300円+税)

商品コード: ISBN978-4-89590-781-1

関連カテゴリ

B5 / 356頁 / 2024年
【著】 関屋 曻(昭和大学名誉教授)
数量
電子版販売サイト
(外部の各販売サイトに移動します)
電子書籍の販売サイト 電子書籍の販売サイト 電子書籍の販売サイト

内容紹介

統計学的なデータ解析、理解できていますか?

入門書では省略されがちな「統計の論理の筋道(ストーリー)」を理解することで、統計を正しく活用することを目指した本書。その特徴は、第一に数学を十分学習していない方でも統計学的なストーリーを読み解けること、第二に入門書であると同時に実際的な問題にもある程度対処できるような実用性をもつこと、第三に本書で十分にカバーされていない問題に対する道標となることです。数式等、難解な記述に偏りすぎないよう配慮しつつ、本格的なデータ処理に必要な統計学的考え方、多種の解析方法について図を多用し、わかりやすく解説するよう工夫されています。
第1版の発行より十数年が経過し、改訂にあたり、新たにいくつかの解析法を加えて内容を充実させ、また各ページに用語解説欄を設けて、さらに読みやすくなるよう心掛けました。

目次

1章 研究のデザインと妥当性
 1.研究のタイプ
  1) 記述研究
  2) 相関研究
  3) 実験研究
 2.因果関係の推論と実験
  1) 因果関係を確認するために必要な条件
  2) 実験の制約条件
  3) 因果関係と統計処理
 3.偽実験デザインと剰余変数
  1) 1群の事前テスト事後テストデザイン
  2) 固定群比較デザイン
 4.真の実験デザイン
  1) 事後テストのみの統制群デザイン
  2) 事前テスト事後テスト統制群デザイン
  3) ソロモンの4群デザイン
  4) 待機(遅延)コントロールデザイン
  5) 多要因実験デザイン
 5.準実験デザイン
  1) 非等価な統制群デザイン
  2) 分離標本の事前テスト事後テストデザイン
  3) クロスオーバーデザイン
  4) 時系列デザイン
 6.実験における統制
  1) 反復
  2) 無作為化
  3) 除去法
  4) 保存法
  5) ブロック化
  6) 統計的統制
 7.実験の妥当性と一般化可能性
  1) 内的妥当性
  2) 外的妥当性
 8.非実験研究
  1) コホート研究
  2) 症例対照研究
  3) 歴史的対照研究
  4) 横断研究と縦断研究

2章 記述統計
 1.記述統計と推測統計―統計学の2つの機能
  1) 記述統計とは
  2) 推測統計とは
 2.推測統計のために必要な記述統計
  1) 変数と尺度の水準
  2) 度数分布
  3) 代表値
  4) 散布度
  5) 分布の形を示す指標
  6) 目標値からのずれの指標

3章 確率分布と標本抽出
 1.母集団と標本
  1) 母集団分布
  2) 標本分布
  3) 母平均と母分散の不偏推定量
 2.無作為抽出
  1) 単純無作為抽出法
  2) 系統抽出法
  3) 多段抽出法
  4) 層別抽出法(層化抽出法)
  5) 無作為抽出における注意点
 3.変数の変換と標準得点
  1) 線形変換
  2) 非線形変換
 4.確率変数と確率分布
  1) 離散分布
  2) 連続分布
  3) 2項分布
  4) 正規分布
  5) 標本平均の標本分布
  6) χ2分布
  7) t分布
  8) F分布
  9) 分布の正規性の確認

4章 ノンパラメトリック検定を用いた2つの条件間の代表値の比較
 1.対応のある2条件間の差の検定(1):符号検定
  1) 符号検定の考え方
  2) 棄却域と採択域
  3) 第1種の誤りと第2種の誤りおよび検定力
  4) 帰無仮説を採択することの意味
 2.対応のある2条件間の差の検定(2):符号付順位和検定
  1) 符号付順位和検定の考え方
  2) 付表を用いて検定する方法
  3) サンプルサイズが大きい場合
 3.対応のない2条件間の差の検定
  1) ウィルコクソン・マン・ホイットニー検定の考え方
  2) マン・ホイットニー検定の説明
  3) サンプルサイズが大きい場合

5章 パラメトリック検定を用いた2つの条件間の代表値とばらつきの比較および区間推定
 1.母平均に関する検定(1):母分散が既知の場合(1標本z検定)
  1) 1標本z検定の考え方
  2) 検定処理
 2.母平均に関する検定(2):母分散が未知の場合(1標本t検定)
  1) 1標本t検定の考え方
  2) 検定処理
 3.ばらつきの差の検定
  1) 2つの母分散の差の検定:F検定
  2) 3つ以上の母分散の差の検定
 4.2つの母平均の差の検定(1):対応のあるt検定
  1) 対応のあるt検定の考え方
  2) 検定処理
 5.2つの母平均の差の検定(2):対応のないt検定
  1) 母分散に差がない場合
  2) 母分散に差がある場合:ウェルチのt検定
 6.母平均の信頼区間の推定
 7.パラメトリック検定の前提条件

6章 3つ以上の条件間の代表値の比較
 1.検定の多重性
  1) 検定の多重性とは
  2) 複数の変数(従属変数)に関して検定を行う場合
  3) 多水準間比較と検定の多重性
 2.分散分析
  1) 1要因分散分析(完全無作為化法)
  2) 1要因反復測定分散分析
 3.3条件以上のノンパラメトリック検定
  1) クラスカル・ウォリス検定(対応のないデータの場合) 
  2) フリードマン検定(対応のあるデータの場合) 
 4.多重比較法
  1) 検定の多重性に対して有意水準を厳しく設定する方法(有意水準調整型多重比較法)
  2) テューキーの方法
  3) その他の多重比較法

7章 多要因の実験デザインと分散分析
 1.2要因とも対応がない2要因分散分析
  1) 各要因の水準数が2で、すべての群のサンプルサイズが等しい場合
  2) 水準数が3以上の要因があり、各群のサンプルサイズが不揃いな場合
 2.2要因の反復測定分散分析
  1) 1要因が反復測定の2要因分散分析(1要因に対応がなく、1要因に対応がある場合)
  2) 2要因とも反復測定の2要因分散分析(2要因とも対応がある場合)
 3.3要因のデザイン

8章 出現頻度と比率
 1.1変数の頻度(比率)の差
  1) 水準(カテゴリー)数が2のとき:2項検定
  2) 水準数が2のとき:正規分布による近似
  3) 水準数が2のとき:適合度のχ2検定
  4) 水準数が3以上のとき:適合度のχ2検定
 2.対応がない場合の2×2クロス集計表の分析
  1) 2変数とも周辺度数が固定されている場合
  2) 2変数とも周辺度数が固定されていない場合
  3) 一方の周辺度数が固定されている場合
  4) 周辺度数と比率を求めるための条件
  5) 検査の診断特性
  6) ROC曲線
  7) リスク比とオッズ比
 3.対応がない場合のrxcクロス集計表の分析
 4.対応がある場合の頻度(比率)の差の検定
  1) 2条件の比較:マクニマー検定
  2) 3条件の比較
 5.正規分布への適合度の検定
 6.母比率の信頼区間の推定
 7.2要因デザインで従属変数が頻度(比率)である場合

9章 2変数間の関連の強さ
 1.相関と回帰
  1) 散布図
  2) ピアソンの相関係数
  3) 回帰直線
  4) 寄与率
  5) 母相関係数の検定と推定
  6) 回帰直線の傾きと切片の検定
  7) 相関係数を用いるときの注意点
  8) 偏相関係数
  9) 級内相関係数:比尺度と間隔尺度における測定の信頼性係数
 2.順位相関係数
  1) スピアマンの順位相関係数
  2) 順位相関係数の無相関検定
 3.連関係数
  1) Φ係数(四分点相関係数)
  2) ユールの連関係数
  3) クラメールの連関係数
  4) κ統計量とκw統計量:順序尺度と名義尺度における信頼性係数

10章 その他の有用な方法
 1.母分散の信頼区間の推定
 2.3つ以上の母分散の差(均一性)の検定
  1) ルビン検定
  2) ブラウン・フォーサイス検定
 3.メディアン検定
  1) 2標本の場合(2群間比較)
  2) 3標本以上の場合(多群間比較)
 4.共分散分析
 5.生存分析(生存時間解析)
 6.相関研究(調査研究、観察研究)と多変量解析
  1) 多変量解析とは
  2) 多変量解析の目的と分類
  3) 独立変数(説明変数)と従属変数(目的変数)がある多変量解析
  4) 情報の要約を目的とする多変量解析:独立変数のない多変量解析
  5) 共分散構造分析
 7.研究の統合とメタ分析
  1) 系統的レビューの手順
  2) メタ分析

付 録
1.基本的な計算ルールと公式
  1) ルート計算
  2) 指数
  3) 対数
  4) 順列と組合せ
2.Σ(シグマ)の使い方と行列でデータを示す方法
 1) 1次元の場合
 2) 2次元の場合
 3) 3次元の場合
 4) その他の重要な公式
3.期待値
 1) 期待値とは
 2) 期待値の計算のための重要な公式
4.2項分布の平均と分散
5.母平均の不偏推定量(n=2の場合)
6.母分散の不偏推定量(n=2の場合)
7.「標本平均の標本分布」の分散
8.標本統計量の期待値と不偏推定量
 1) 2つの確率変数の和の期待値と分散
 2) 倍率の法則
 3) 互いに独立なn個の確率変数の和 T=X1+X2+…+Xnの期待値と分散
 4) 標本平均X¯の期待値E[X¯]と分散σX¯2
 5) 2つの確率変数の差の期待値と分散
 6) 2つの標本平均間の差の期待値と分散
 7) 不偏分散の期待値
9.分散分析の理論
 1) 1要因分散分析の理論的説明
 2) 無作為モデルと母数モデル
10.ピアソンのχ2の簡便な計算法
11.回帰直線とピアソンの相関係数
 1) 変数Xから変数Yを予測する(XへのYの回帰)
 2) 変数Yから変数Xを予測する(YへのXの回帰)
 3) 相関係数r
 4) 寄与率
12.線形回帰における予測値、実測値、および残差の関係
13.2変量正規分布
14.直線補間の方法
15.Excelによる統計量の計算式(関数)
16.ボンフェローニの不等式
17.偏相関係数
 1) 偏相関係数の数値計算
 2) 偏相関係数の計算式の導出
18.パラメトリック検定の仮定と頑健性
 1) 母集団分布の正規性の仮定
 2) 1標本t検定と“対応のあるt検定”
 3) 2標本t検定(“対応のないt検定”と“ウェルチのt検定”)
 4) 分散分析
 5) 母集団の歪度、尖度、および“母分散の差(比)”の推定法

付 表
付表1:Φ=0.5の2項分布
付表2:正規分布の上側確率
付表3:t分布
付表4:χ2分布
付表5:上側確率αのときのFの臨界値
付表6:符号付順位和検定におけるTの臨界値
付表7:ウィルコクソン・マン・ホイットニー検定におけるUの臨界値
付表8:スチューデント化された範囲qの臨界値
付表9:クラスカル・ウォリス検定における種々の有意水準の“Hの臨界値”
付表10:フリードマン検定における種々の有意水準の“Frの臨界値”
付表11:スピアマンの順位相関係数の無相関検定における臨界値

参考文献
索引


書評

統計の論理的ストーリーが楽しめる
評者:高橋正明(群馬パース大学、理学療法士)

 書評を書くにあたり、評者と著者との関係を簡単に述べておきたい。執筆依頼は著者本人から受けた。依頼の理由も引き受けた理由も互いに伝え合っていないが、2人は古希を過ぎてもなお互いにリスペクトする数少ない仲間同士、以心伝心の助け合いが普通だからであろう。2 人は共に社会に出た後で理学療法士の道を見つけ、時期は違うが同じ養成校に進み、同門のつながりで知り合った。2000年を挟む10 年間を、ある短期大学の立ち上げとその後の教育で共に汗を流した。今回は先輩として客観的な執筆を心がけた。
 最初に浮かんだ疑問は、どんな必要性があって改訂をしたのかである。研究法と統計についてはすでに学問として確立されており、またタイトルの研究のデザインや統計処理そのものについてもすでに一般化しており、改訂の対象になるとは思えない。著者はもともと筆が立ち、すでに複数の論文が世に出ている。科学論文に必須となる図版をつくることにも長けていて、ある外国雑誌の表紙一面が、投稿した論文の見事なグラフ図で飾られる快挙があった。また統計の授業は論理的で明快との学生評価が常で、長年にわたって独学で統計学を究めた著者の実力であれば初版本で十分に事足りるはずだ。改訂までにどうして14 年かかったのか。その時間と時期に答えがありそうである。
 本書改訂の必要性についていろいろ模索したが、うまい答えが浮かばない。それではと初版本と改訂版を直に並べて比較しながら読むことにした。実は改訂版を読みはじめてすぐ、何かとても読みやすい感じがした。慌てて他の章に移っていくつか比較したが、やはり同じ感じを受けた。理屈ばかりの統計学の文章が頭の中へスムーズに入ってきて、しかも集中が途切れない。不思議な悦びの感覚におそわれて、思わず初版本とは別物と錯覚しそうになった。
 とにかく改訂版は読みやすいのである。この不思議を自分なりに探り、2 つの要因を見つけた。ひとつは原稿書きに向かう著者の心構えの違いであり、もうひとつは改訂版の装丁の妙である。初版本を執筆していた当時の著者は教育と研究に加えて職場の管理、そのうえで研究指導をしていたはずである。超多忙な日々を送りながらの執筆では、自身の研究指導にあたった経験やまとめた知識を坦々と書き連ねるしかなかったと思われる。そして書き上がったのが初版本で、一人でよくぞここまでまとめあげた完成度の高い実用書である。ある程度力のついた研究者、あるいは研究指導者に喜ばれそうな一冊である。
 一方、改訂版は著者が現役を終えた後にまとめられており、余裕の中での改訂作業だったと思われる。著者の改訂に向かう姿勢は、指導を受ける側が自ら読んで初版本の内容が理解できるように、読みやすくそしてわかりやすく書き換えることだったであろう。読み手本意の言葉遣いや文章の言い回し、すべての項目を吟味してわかりにくい箇所には図を多用し、理解しにくいところは少数データを用いた例題でうなずかせる細やかな配慮が全章にわたって丁寧にちりばめられたのである。
 最後に改訂版の装丁の妙についてであるが、読みやすさで特筆されるべき要素として文字数がある。B5 版のページ傍注にコメント欄を設けたことで横一行の文字数が初版本よりも5 文字少ない36文字で抑えられた。文章は1 行ごとに句切られて読まれるため、特に集中力を必要とする文章は文字数の少ないほうが理解しやすい。またコメント欄は余白が多くなり圧迫感が減少した。今回の改訂の目玉の一つであろう。
 本書は改訂することによって極めて読みやすくなった。必要があるときしかお世話にならなかった統計の本であるが、読みやすくなると理解が進む。進むと統計の論理的ストーリーがおもしろく楽しめるようになる。本書の副題が示唆しているように。

「作業療法ジャーナル」vol.59 no.1(2025年1月号)(三輪書店)より転載