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第19回勇気ある経営大賞

未知との遭遇 ─癒しとしての面接─

定価:2,670円(本体2,427円+税)

商品コード: ISBN978-4-89590-062-1

四六 / 260頁 / 1997年
【著】 奥川幸子
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内容紹介

この一冊で対人援助の基盤と視点が見えてくる畢生の力作。

面接は、その目的や場面、面接を受けるものと応じるものの諸々の状況によってまったく異なった様相をみせる。メディカルソーシャルワーカーとしての豊富な経験と、長年にわたってノートに綴られた綿密な記録が生み出した面接上手のノウハウを全公開。この一冊で対人援助の基盤と視点が見えてくる畢生の力作。

目次

第1部 面接の醍醐味

第1章 面接とは〈課題を達成すること〉
 1 日常のなかにある面接
    人生の節目に控えている面接/恋愛だって一種の面接行為である
 2 治療を受けるときの面接
 3 こころの悩みや生活上の問題を解決するための面接
 4 面接とは課題を達成すること

第2章 面接とは〈一期一会〉
 1 面接は一期一会
    文化人類学でいう〈一期一会〉/面接で出会う人は〈行きずり〉の関係
 2 秘密のヴェールを開けるとき
    家庭訪問の帰り、同僚の昔話を聴いてしまった
 3 不思議な暗号が働くとき
    スーパーヴァイザーのひとことから喚起された想い
 4 からだとこころに刻印された経験
    対象者の内的な世界を理解するためには/〈からだとこころに刻印された経験〉は生きる原動力にもなれば、凶器にもなる/〈からだとこころに刻印された経験〉について……痴呆性老人の姿からみる
 5 秘密の扉を開けるときは覚悟がいる
    秘密の扉を開けるときには、「ONE OF ONE」に近いエネルギーがいる/70歳の人……独立と依存のはざまにあった人との援助関係
 6 面接は未知との遭遇

第3章 面接とは〈ドラマを演ずること〉
 1 面接はドラマを演ずること
 2 面接する側も観察され、試される
    Aさんのこと……クライエントとの外出/突如、Aさんは言った、観ていた。そして笑顔になった
 3 添えるか、添えないか
    添えない面接者/添えるか添えないかは、初回面接で決まる
 4 存在そのものがプロフェッショナル、臨床家に必要なものは〈動物的な知〉
    援助者としての私の目標/私が目標とする人との一問一答/看護婦の専門性である〈身体ケア〉の技術のうえに成立している援助関係
 5 魅せられて――相手のぺースにはまるとは
    ある若い男性ソーシャルワーカーの経験/グループスーパーヴィジョンでの考察……絵解きの作業/脱出のテクニック

第2部 対人援助の基本的な視点

第1章 人が人を援助するとは、それも職業(仕事)として援助するとは……
 1 はじめに――あるクライエントとの出会い
 2 あるクライエントとの援助関係
    失語症の彼との出会い/彼は、心臓弁膜症の手術を受けた……私が八年前に受けた手術と同じだった/彼を一人の人間としてみてほしい……仮想敵国があると援助者は燃え上がる/彼が本当に自分の力で勝ったのか、援助者の傀儡になってくれたのか/ドラマはさらに続いた……クライエントの人生にかかわることへの畏怖/それから?……彼の死まで/霊安室の光景……/それから?……20年の空白も、ものともしない〈関係性の歴史〉に私は圧倒された
 3 新しい援助関係の構築
    私自身のからだとこころに刻印されていたことに気がつく/援助ロボットになっていた私の前にあらわれてくれた彼/援助者が「生きる」「生きてきた」すべてがかかわり合う援助関係
 4 対人援助の原点は「人が生きること」への感受性にある
    医療の場におけるソーシャルワーカーの仕事/「人が生きる」ことへの感受性/専門的知識・技術の基礎のうえに生じる「人が生きる感受性」/専門的援助関係と一般的援助関係の違い/援助者と対象者のからだとこころに刻印された経験の総体

第2章 対象者が置かれている状況をポジショニングする
 1 はじめに
 2 ポジショニング――ーいま、目の前にいる人はどこにいるか
    《ポジショニング》という概念について/援助専門職がとるべきスタンディングポイント/対象者の〈問題の中核〉をつかむ/援助者と対象者との距離をはかる/対人援助は、双方の身体(こころ)を媒体にして成りたつ/ニーズの抽出と《アセスメント》が対人援助の第一歩であり、援助の決め手になる/対象者の全体像を把握する……過去・現在・未来の座標軸でみる/対象者を四次元でみる
 3 対象者のポジショニング……いま、目の前にいる人はどこにいるか
    どのライフステージにいるか/《対象喪失》のどのプロセスにいるか/かつての問題(課題)への対処の歴史をみる/属している場での位置や関係の変化をみる/対象者と家族の間にあるニーズ(または表現された訴えやディマンド)のくい違いをみる。さらに、それらのニーズ(訴えやディマンド)と現実との間にあるギャップをみる

第3章 対象者へのポジショニングの視点……心理・社会生活上の問題把握への視点
 1 はじめに
    対象者の内的世界の動きをみながら、社会生活上の問題を洞察する/さまざまな位相のズレをみる/心理・社会生活上の問題に対する《アセスメント》なしには的確なケアマネジメントに到達しない
 2 ポジショニングのための視点
  (1)発病前の発達、生活の歴史
    ――こころとからだと社会(職業、家庭など)生活の歴史、人間関係の歴史
    これまでの身体(からだ)とこころ(魂)に刻印されてきた経験の総体をみる/生活史を聴くことの意味
  (2)疾病や受傷、障害が対象者に及ぼした打撃、周囲への波紋、今後の生活再建への影響をみる――対象者個人の内的資源からみる
    私のクライエントのこと
  (3)病気や障害が対象者に及ぼした打撃、周囲への波紋
    ――今後の生活再建への影響を社会的な関係からみる
  (4)病気や障害が対象者に及ぼした打撃、周囲への波紋
    ――家庭状況を、対象者を受け容れられる情緒的居場所(スペース)と家族が対象者にかかわれる能力からみる
    家族が対象者にかかわれる能力
  (5)住環境・居住地域の特性と文化
    ――物理的居場所のスペースと依存度をみる
    デコレーション(意識的に装ったもの)が徐々に剥がれていったおばあさん
  (6)現代社会の構造、時代と文化の背景
    ――育ってきた時代や文化・社会の思潮や価値観と現代とのズレをみる
    現代社会の高齢者や障害者に対する〈まなざし〉を視野にいれておく

第4章 対人援助の基盤〈相談援助に必要な視点〉
 1 はじめに――相談援助に必要な視点
 2 問題の種類と程度を理解し、問題に影響を与える個人の経験と社会の影響を理解する
  (1)問題の程度をみる――問題とするか否か
    no problemの人はいない/その問題は、生活にどの程度影響しているか/問題が問題になるとき、そして誰が対処(解決)するか
  (2)問題の種類を四つに分ける
    なぜ、この腑わけが臨床で生きるか/目の前の人(被援助者)が〈生きる〉意味と結びつかなければ、ニーズとは言えない
    《事例:ムッとしていた看護婦さん》
    800円と21万円の違いはクライエントのニーズに関係してくる
    1 表現された訴え complaint
    2 悩み、困っていること trouble
    3 必要不可欠なこと need
      本人が対処・解決できないニーズ/ADL=ニーズか
    4 要求 demand
  (3)なぜ、問題の分解にこだわるのか
    ニーズは問題のなかに隠れていることが多い/迷ったときは基本に戻る/実際の臨床場面では、問題はすっきりと四つに分けられない
  (4)事例を参照しながら、問題を四つにわけて考える
    事例の記述に欠かせない「ニーズ」把握と「アセスメント」の目/臨床現場で目にする光景・その1
    《ケーススタディ――死を目の前にした七五歳の男性の問題》
    臨床現場で目にする光景・その2/記述された事例と実際場面との違い/面接は知的な作業である/状況の絵解き/臨床現場で目にする光景・その3/問題(解決課題)への対処には時間的制約がある/ニーズをあぶりだす
    《ケーススタディ――インテーク面接・一回目》
    1 このケースの問題点をアセスしてみると
    2 今後の対応
    3 《ケーススタディ》の問題を四つに分けて考える
      《ケーススタディ――インテーク面接・二回目》
    1 決め手のときを逃がさない
    2 そのとき、その場の現象すべてがアセスメントの指標
    3 この時点でニーズは判明した
    4 引き受けるということ
  (5) 本人の持つ強さ(力・パワー)――内的資源と限界
     「能力」と「実力」/モチベーション(動機づけ、問題に取り組もうとする意欲)/本人の心的耐性、感じ方、認識のしかた/そのとき(現在)のその人が置かれている状況/本人が対処できるとき……対人援助職がとる援助技術と援助のスタンス

 3 援助者としての私が置かれている状況(と場)をポジショニングする

  (1)私が置かれている状況を把握する――クライエントに最大の援助をするために、さらに援助者自身の身を守るためにも己れの身体と心の状態に目を向ける
  (2)私は、誰に対して、どこで何をする人か――[場]のポジショニング、場の能力を知る
     私たちが所属する相談機関や施設の機能や役割は?

 付録
  患者を理解しえないことからの出発
  異界のフィールドワーク――『日本妖怪巡礼団』を読む
  臨床例でみる“四つの目玉”