身体運動学 知覚・認知からのメッセージ
定価:3,080円(本体2,800円+税)
商品コード: ISBN978-4-89590-319-6
内容紹介
知覚・認知の視点から、身体運動がもつ新たな一面を解き明かす
従来、身体運動学といえば、運動の出力に関わる機能解剖学、運動力学、運動生理学などの機能を取り扱う学問であった。しかし近年、認知科学の急速な発展に伴い、知覚・認知機能が運動制御や運動機能に密接に関連しているという事実が次々と明らかにされている。リハビリテーション領域においても、知覚や認知機能の重要性を認識するセラピストが増加し、その成果を臨床に活かそうという気運が高まっている。
本書は、二人の筆者がそれぞれの専門である『実験心理学』と『リハビリテーション科学』の立場から認知科学の研究成果を紹介したうえで、知覚・認知機能が身体運動に対してどのような貢献をしているか、また知覚・認知の機能を理解することの臨床的重要性について、わかりやすく解説した秀逸な一冊である。
目次
第 1 章 知覚・認知と身体運動の不可分性・・・樋口貴広
第 1 節 関連用語の整理
第 2 節 知覚と身体運動
第 3 節 認知と身体運動
第 4 節 リハビリテーションとの接点
第2章 知覚の顕在性,潜在性と身体運動・・・樋口貴広
第 1 節 意識経験と身体
◆身体意識
* アウェアネスとしての意識
* 筋紡錘と身体意識
* ピノキオ錯覚
* 身体意識に関わる大脳皮質運動関連領域
* 四肢の姿勢と位置覚
◆身体意識を物語る不思議な現象
* 幻肢
* 身体失認
* 模型の腕に感じる触覚
* ミラー・セラピー
* 体外離脱
* 身体意識の様相
* 視覚意識に学ぶ脳の働き
第 2 節 意識と注意
◆空間的注意,視覚的注意
* 注意による反応促進効果
* 注意による検出感度の上昇
* 顕在的注意と潜在的注意
* 注意のメタファー
* 注意を体感する―線運動錯視
◆非注意性盲目,チェンジ・ブラインドネス
* 目の前のゴリラに気づかない?
* 非注意性盲目―実験室的研究
* 変化の見落とし
* 実環境における検証
◆注意の瞬き
* 注意の時間的制約
* 注意の瞬き現象と認知情報処理
◆半側空間無視―注意の障害?
* 注意障害説
* カニッツァ図形を利用した実証研究
第 3 節 意識にのぼらない知覚
◆意識にのぼらない知覚情報処理
* 3 つのアプローチ
* 空間的注意を利用する方法
* マスキングを利用する方法
* 神経心理学的な方法
◆意識にのぼらない知覚情報に対する意味的な処理
* プライミング効果
* 無意識的プライミング効果
* 無視された空間の刺激がもたらすプライミング効果
◆意識にのぼらない知覚情報処理と身体運動
* 意識は騙されるが,運動は騙されない
* 臨床報告
* 錯視図形に対する意識経験と運動の乖離
* 体性感覚刺激に対する意識経験と運動の乖離
* 意識経験と運動の乖離をどのように考えるか
◆身体運動に意識は必要ないのか?
* 行為を監視し,調整する高次の意識
* 身体運動の抑制障害(環境依存障害)
* うっかりミス(アクション・スリップ)
第3章 知覚運動系という考え方・・・樋口貴広
第 1 節 知覚と運動の循環論
◆生態心理学の発想
* 脳の中枢制御を想定しない理論
* 環境のもつ役割―アフォーダンス
◆知覚と行為の循環論
* 知覚と運動の不可分性
* 動きの中で発生する知覚情報
* 認知科学からみた生態心理学
第 2 節 視線行動と身体運動
◆視線行動の基礎
* 眼は絶えず動いている
* 眼を動かす理由
◆視線行動と歩行
* 目標指向的な視線の動き
* 障害物をまたぐ際の視線行動
◆視線行動と上肢動作
* 生活場面における視線行動
* 先読みする視線
◆視線行動のもつ可能性
* 身体運動の先導役を担う視線行動
* 視線行動への介入と身体運動の改善
第4章 身体と空間の表象・・・樋口貴広
第 1 節 身体の表象
◆身体図式の特性
* 身体図式とは
* 身体図式と身体イメージ
* 身体図式を支える神経活動
◆身体図式と道具,半側空間無視
* 物を取り込む身体図式
* 空間の左右を規定する身体図式
第 2 節 空間の表象―身体との接点
◆「手の届く空間」の表象
* 手の届く空間だけを無視してしまう半側空間無視
* 触消失の症例と空間表象
* 物を取り込む身体図式―触消失への影響
* 棒が届く範囲全体が近位空間として表象されるのか
* まとめ―手の届く空間の表象
◆「移動する空間」の表象
* 障害物の回避動作にみる空間の表象
* 障害物を回避するための予測的な動作修正
* 遠位空間の視覚情報と障害物回避
* 遠方の障害物に対する視知覚判断の正確性
* 狭い空間の表象と身体図式の役割
* まとめ―移動する空間の表象
第5章 運動の認知的制御・・・森岡 周
第 1 節 情報器官としての身体
◆身体を通して獲得する情報とその情報処理
* 身体受容表面とは何か?
* 一次運動野における運動感覚情報処理
* 神経可塑性と情報化システム
* 感覚の情報処理と異種感覚統合プロセス
第 2 節 運動の認知的制御システム
◆運動の認知的制御
* 運動行動のための認知処理と並列分散処理機構
* 行為のための認知機能
* 感覚系から運動系への座標変換
◆上肢動作の認知的制御
* 手の到達・操作に関する運動制御
* 内的言語化による運動産生システム
* 手の運動におけるミラーニューロン・システム
* 道具操作における片手および両手の運動制御システム
◆歩行の認知的制御
* 歩行の運動制御システム
* 歩行制御における神経可塑性
第6章 運動学習・・・森岡 周
第 1 節 運動学習とは何か?
◆運動学習の定義
第 2 節 運動学習の諸理論
◆発達・行動心理学に基づく学習の諸理論
* 古典的条件づけ理論
* オペラント条件づけ理論
* 認知・表象理論のはじまり
◆運動学習理論の展開
* 知覚動作サイクル
* 誤差検出・修正モデル
* 閉回路理論
* スキーマ理論
* 生態学的視点
* アクティブタッチモデル
第 3 節 運動学習の神経科学
◆運動学習の神経科学的基盤
* 運動学習に関連する脳領域
* シナプス可塑性
* ニューラルネットワーク
* 長期増強と長期抑圧
◆運動学習の神経科学モデル
* 強化学習モデル
* 教師あり学習
* 教師なし学習
第 1 節 関連用語の整理
第 2 節 知覚と身体運動
第 3 節 認知と身体運動
第 4 節 リハビリテーションとの接点
第2章 知覚の顕在性,潜在性と身体運動・・・樋口貴広
第 1 節 意識経験と身体
◆身体意識
* アウェアネスとしての意識
* 筋紡錘と身体意識
* ピノキオ錯覚
* 身体意識に関わる大脳皮質運動関連領域
* 四肢の姿勢と位置覚
◆身体意識を物語る不思議な現象
* 幻肢
* 身体失認
* 模型の腕に感じる触覚
* ミラー・セラピー
* 体外離脱
* 身体意識の様相
* 視覚意識に学ぶ脳の働き
第 2 節 意識と注意
◆空間的注意,視覚的注意
* 注意による反応促進効果
* 注意による検出感度の上昇
* 顕在的注意と潜在的注意
* 注意のメタファー
* 注意を体感する―線運動錯視
◆非注意性盲目,チェンジ・ブラインドネス
* 目の前のゴリラに気づかない?
* 非注意性盲目―実験室的研究
* 変化の見落とし
* 実環境における検証
◆注意の瞬き
* 注意の時間的制約
* 注意の瞬き現象と認知情報処理
◆半側空間無視―注意の障害?
* 注意障害説
* カニッツァ図形を利用した実証研究
第 3 節 意識にのぼらない知覚
◆意識にのぼらない知覚情報処理
* 3 つのアプローチ
* 空間的注意を利用する方法
* マスキングを利用する方法
* 神経心理学的な方法
◆意識にのぼらない知覚情報に対する意味的な処理
* プライミング効果
* 無意識的プライミング効果
* 無視された空間の刺激がもたらすプライミング効果
◆意識にのぼらない知覚情報処理と身体運動
* 意識は騙されるが,運動は騙されない
* 臨床報告
* 錯視図形に対する意識経験と運動の乖離
* 体性感覚刺激に対する意識経験と運動の乖離
* 意識経験と運動の乖離をどのように考えるか
◆身体運動に意識は必要ないのか?
* 行為を監視し,調整する高次の意識
* 身体運動の抑制障害(環境依存障害)
* うっかりミス(アクション・スリップ)
第3章 知覚運動系という考え方・・・樋口貴広
第 1 節 知覚と運動の循環論
◆生態心理学の発想
* 脳の中枢制御を想定しない理論
* 環境のもつ役割―アフォーダンス
◆知覚と行為の循環論
* 知覚と運動の不可分性
* 動きの中で発生する知覚情報
* 認知科学からみた生態心理学
第 2 節 視線行動と身体運動
◆視線行動の基礎
* 眼は絶えず動いている
* 眼を動かす理由
◆視線行動と歩行
* 目標指向的な視線の動き
* 障害物をまたぐ際の視線行動
◆視線行動と上肢動作
* 生活場面における視線行動
* 先読みする視線
◆視線行動のもつ可能性
* 身体運動の先導役を担う視線行動
* 視線行動への介入と身体運動の改善
第4章 身体と空間の表象・・・樋口貴広
第 1 節 身体の表象
◆身体図式の特性
* 身体図式とは
* 身体図式と身体イメージ
* 身体図式を支える神経活動
◆身体図式と道具,半側空間無視
* 物を取り込む身体図式
* 空間の左右を規定する身体図式
第 2 節 空間の表象―身体との接点
◆「手の届く空間」の表象
* 手の届く空間だけを無視してしまう半側空間無視
* 触消失の症例と空間表象
* 物を取り込む身体図式―触消失への影響
* 棒が届く範囲全体が近位空間として表象されるのか
* まとめ―手の届く空間の表象
◆「移動する空間」の表象
* 障害物の回避動作にみる空間の表象
* 障害物を回避するための予測的な動作修正
* 遠位空間の視覚情報と障害物回避
* 遠方の障害物に対する視知覚判断の正確性
* 狭い空間の表象と身体図式の役割
* まとめ―移動する空間の表象
第5章 運動の認知的制御・・・森岡 周
第 1 節 情報器官としての身体
◆身体を通して獲得する情報とその情報処理
* 身体受容表面とは何か?
* 一次運動野における運動感覚情報処理
* 神経可塑性と情報化システム
* 感覚の情報処理と異種感覚統合プロセス
第 2 節 運動の認知的制御システム
◆運動の認知的制御
* 運動行動のための認知処理と並列分散処理機構
* 行為のための認知機能
* 感覚系から運動系への座標変換
◆上肢動作の認知的制御
* 手の到達・操作に関する運動制御
* 内的言語化による運動産生システム
* 手の運動におけるミラーニューロン・システム
* 道具操作における片手および両手の運動制御システム
◆歩行の認知的制御
* 歩行の運動制御システム
* 歩行制御における神経可塑性
第6章 運動学習・・・森岡 周
第 1 節 運動学習とは何か?
◆運動学習の定義
第 2 節 運動学習の諸理論
◆発達・行動心理学に基づく学習の諸理論
* 古典的条件づけ理論
* オペラント条件づけ理論
* 認知・表象理論のはじまり
◆運動学習理論の展開
* 知覚動作サイクル
* 誤差検出・修正モデル
* 閉回路理論
* スキーマ理論
* 生態学的視点
* アクティブタッチモデル
第 3 節 運動学習の神経科学
◆運動学習の神経科学的基盤
* 運動学習に関連する脳領域
* シナプス可塑性
* ニューラルネットワーク
* 長期増強と長期抑圧
◆運動学習の神経科学モデル
* 強化学習モデル
* 教師あり学習
* 教師なし学習
【著】樋口貴広(首都大学東京人間健康科学研究科)
森岡 周(畿央大学健康科学部理学療法学科)